・8日、火曜日。
プラモではない、「本物の」パジェロミニの納車。つまり「3台目のパジェロミニ」(パジェロミニの納車が待ち遠しく、同じプラモデルを2台作った(笑))。
会社を早々に切り上げ(ってホントはそーゆー状態では無いが)、アドレスをぶっ飛ばして帰宅。奥さんも既に帰宅済み。てきとーにスカイラインの「かたづけ」をしたが、全然まとまらず。トランクの中とかグッチャグチャのまま神奈川三菱へ(場所は三ツ沢交差点のトコね)。
担当の営業の方に札束を渡し、かわりに車検証とかクルマとかそーゆーのを貰う。軽の車検証は半分の大きさでカワイイ。PL法の絡みかなんかで、納車の際に「チェック項目」をディーラーと一緒に確認する。オプションも全部付いているようだ。
スカイラインに乗っかっていたモノを全てひっつかんでパジェロミニの後席に放り込む。ちなみにスカイラインは1年くらい掃除してないような気がする。まいいか。「んじゃ、またよろしく」っつってディーラーを後にする。
とりあえず菅田のシェルでガソリンを満タンにし(ハイオクともオサラバね)、その辺をクルっと一回りして帰宅。
オーディオレスで注文してあるので、この時点ではラジオも付かず(でも高度計と方位計と時計は付いてんだよね)。センターコンソールの2DIN分ガラ空き(下段にはカップホルダーみたいのは付いてる)。
・12日、土曜日。
午前中ダイクマにちょっと寄ったが、特に買い付けはせず。
午後はオーディオ等の購買&取付を行う。
私の希望は、センターユニット(TV/FM/AMチューナー+カセットデッキ+液晶ディスプレイ+4チャンネルアンプ)とカーナビとスピーカー(フロント+リアをトレードイン、但しフロントはセパレートにしてダッシュボードの上にツィーターを置く)と、あとTVアンテナ、か。センターユニットは液晶の画素数でほぼパナソニックのAV-150で決まり。カーナビも機能の豊富さとセンターユニットとの相性(RGB直結が出来る、リモコン受光部が使える、等)で同じくパナソニックのV700で決まり。スピーカーはトレードインを前提に考えると、なにしろ付く製品が無い。フィッティングリストを洗いまくって、結局カロッツェリアとアルパインに該当の製品がある事を突き止める(この辺はメジャーなセダン系のクルマとはエライ違いだ)。
で、上記の組み合わせで、トータルの見積を以下のショップで行った。但し、スピーカーの選択にはショップ毎に多少違いがある。
オートバックス駒岡店 ‥‥428,593円
オートテック新横浜店 ‥‥397,271円
スポット大和店 ‥‥339,900円
イエローハット大和北店‥‥371,800円
ちなみに各店共取付費と税込み。
資本主義の自然な流れで、我々はスポット大和店での購入を決断した。しかし、ここで奥さんはもう一歩食い下がり、自慢のスマイルで9900円を切り捨てさせ、結局税込みで33万きっかり。最初に行ったオートバックスと約10万の違いだ(スゴイ)。
取り付けも、ホントは自分でやるつもりだったのだが、直後に北海道が控えており、かつ私にはそういった時間が全然残されていないっつーのがあって、まタダだし、プロにやってもらうコトにした。スピーカーを付けるのにパネルをドアもリアサイドもはがさなきゃならんし、配線でカーペットもはがさにゃならんし、当然センターコンソールもはがさにゃならんし、ナビの信号取りで車速パルスやらバックギアセンスやパーキングセンスも取らにゃならんし(パーキングは付ける気なかったケド)、とにかく手間と時間がかかりそうだったんすよね。
結果、プロが2人がかりでやって3時間ちょいでした。その間我々はユザワヤいったりスパゲッティ食ったりしてたっす。あ、また口語体になっちまったい。
スパゲッティを食っている間に、ふと、思い立つ。TVとかって、確かパーキングブレーキランプ点灯中しか見れないようにするんだっけ。というわけでスパゲッティ屋からスポットへTEL。「あのー、いわゆる走行中にTV見れるようにパーキングんトコ繋がないどいて欲しいんすけど」「なるほど、もしかするとウチのピットが配線ミスするかも知れません。ま、とりあえず時間になったら来てみて下さい」‥‥結果、配線ミスされていた。
取り付け完了までに、スポットで細かい買い物をする。奥さんは初心者マークとか買ってる(おいおい)。北海道に上陸して洗車した時、この初心者マークは灰皿の中へしまわれている(そのくらい小さいヤツなんよ)。
さて、取り付けも済み、クルマを受け取って大和を後にした。画面でカーナビは確かに現在位置を示している。テレビアンテナはロハで、バックドアの両端上端に付いていた。まあ、こんな感じかな。その他、カーナビ本体の位置や(助手席の下)ツィーターの位置とかも、細かく指定しておいたので、取り付けそのものに特に不満は無い。ダッシュボードの上のツィーターは、やはり効果適面!(こーゆー字か?) 今までスカイラインのように前スピーカーがフロントドアのしかも下の方に付いてる場合、運転者や助手席の人の足が耳との間に立ちはだかり(いや、座っているか(笑))、高音部は壊滅的に減少する。スカイラインの場合、高音のニュアンスを伝えていたのはリヤスピーカーであった。従って、感覚的には(例え4スピーカーではあっても)音の性格付けはなんとなく「後ろから」されていた気がしてた。それがパジェロミニでは、完全に前方からとは言えないものの、少なくとも足とかで高音部が遮断されるコトは無くなり、「前の方からクリアな音が!」って感じになっててグー!ってワケだ。
大和のユザワヤで買った生地を届ける為、我々は市沢の義理の姉の家を目指した。よし、試しにカーナビに経路探索をさせてみよう。ピッピッピッ‥‥。パッ。お、出た出た。ふんふん、246から旧16を通って、上川井はそのまま真っ直ぐか‥‥おおお!? そこで右にまがるかあ?ってトコで右へ曲がるような経路が画面に出ていた。えー、何つーか、ローソン(だったよな)がある鋏状の交差点(オリンピックよりは結構横浜寄りんとこね)を右にいき、ワットマンのそばを通って鶴ヶ峰の駅前に続く道を行け、というのか。ううむ。確かにそーゆーテもあるが‥‥。ま、この際だ、カーナビに従ってみよう。てやっ!っと右へ曲がる(曲がる、というよりは、それるって感じだな)。ワットマンの前を通り‥‥、あ、ちょっと待った。ワットマンに寄りたいな。
実は前から欲しい、と思っていたものがあり、今回の北海道には是非持って行きたいと思っていたのだ。それは、8mmビデオカメラにくっつける、コンバーターレンズだ。僕が欲しいのは、2倍とか3倍とかのテレコンバーターではなく、0.5倍以下にするワイドコンバーターだ。ずっと前、厚木の米軍基地公開のデモフライトを見た時、「ま、これくらいの倍率(ウチのTR-900は光学のみの10倍だ)があれば少なくとも望遠側はOKだな」と思っていたのだ(どーゆー判断基準だ?>オレ)。ただ、常々広角側がちと弱いなあ、とは感じていたんだよね。昔スチールではME-SUPERに24mmとかを付けてたんで(24から50のズームなんだコレが)、広角の威力ってゆーのは知っていたのよね。ところが、ホームビデオって広角側がそんなに広くとられてない。ま、元をあんまし広角側にふっちゃうと、望遠にしたときツライとかレンズがでかくなるとか、Fが悪くなるとか、ケラレるとか、何かわからんけど理由があるのだろう。TR-900はフィルター径が52mmなので、それに合うような外づけのコンバーターを探していた。別にメーカーにはこだわっていなかったのだが、サードパーティー製のは40mm台の径のヤツと共用で間にリングかませて使うようなヤツしか見あたらなくって、それじゃあケラレたりしてヤダなあ、と思っていた。唯一、ソニーが52mm専用でかける.5のヤツを出しているのをカタログで知ってはいた。でも見たコトなかったんだよね(これより前、ヨドバシ横浜駅前に行った時には在庫が無かった)。
しかし、所詮は旧清水電気、ワットマンには置いてなかった。
鶴ヶ峰の駅前を通り過ぎ、姉家、着。しばし猫とたわむれた後、新車を自慢げに見せびらかした(猫ぢゃなくて人によ)。反応は上々。
うれしさのあまり中山へ(なんで?)。ダイエーの上にある電気屋へ行く。ここにも目当てのワイドコンバーターは無い。大滝詠一のCDも無い。しょうがないのでミニステレオプラグを両端に持つオーディオコードで抵抗無しのヤツを買った。実は、先程DATの出力をヘッドユニット前面のオーディオ入力端子へ自前のオーディオコードで突っ込んだところ、VTR-INにしても全然音が出なかったのだ。恐らく、コードが抵抗入りだったのだろう、と判断していたワケだ。ところが!! 実際にはそうではなかった。新たに買った抵抗無しのコードで繋いでも、音が出ない。んー何で何で? こんな時はマニュアルを読むのだ。RTFMだ。何々、VTR-INを2秒以上押し続け、AV-INにして下さいー? ッピッ。ガーン! 音が出た。最初っからマニュアルを読むべきであった。「らしくないねー」と奥さんに言われてしまった。ガチョーン。
夜も更けたので、いいかげん家へ帰る。さすがに疲れた。晩飯を作る気力が二人とも無い。「モスー、モスー」と奥さんがゆーので、パジェロミニに再び乗った私は和田町を目指した。16号モスの前。ディバッグを開ける。ガーン! 財布がない。奥さんにTEL。「財布がねいのでぃす」「うっきー!!!」でも奥さんは怒るコト無くDioで和田町にやってきた。家で食うつもりだったモスバーガーは結局店内で食べるコトとなった。「しかしこの店、客入ってないケドよくつぶれないなー」
・13日、日曜日。
まず、新横浜の日興(DIY店)だ。
何週間か前、ダイクマで安売りしていたのに買い逃したものがあった。物干し竿、500円。伸縮自在のやつ。ないんだコレが。他には。その後ダイクマにも何度か足を運んではいたが、2度とその値段にお目にかかることはなかった。物干し竿を何に使うかは、後に話す。
で、日興に行ってみたら、1本860円でステンレス製のが売っていた。「んまあ、いっかー」というコトで2本購入。問題は物干しをどーゆーふーに「縛るか」だが、これは取り敢えず5mm径くらいのナイロンロープを買っておく事で対処とした。色は緑だ。そいから、7mかける5mとゆー、広大な薄手のグランドシートを買う。1980円、安い!
後、パジェロミニのキーのスペアを作成する。
次! 横浜!! 奥さんを運河わきの道路の路上にパジェロミニに乗せたまま残し、ワタシは一人でヨドバシ、ビックカメラ、ALIC日進等を徘徊した。しかし、パジェロミニのプラモは無い。ってちがーう!! ワイドコンバーターはビッグカメラで発見。オレぁ初めてビックのポイントカード作ったね。0.5は「セミフィッシュアイ」って書いてある。うし!!
あと、ヨドバシでDC-ACコンバーターを購入。これで走行中もビデオのバッテリーやらひげそりの充電、奥さんのコンタクトの煮沸が出来るのさっ。98ノートも使えるから、テキストファイルを走行中に打てるぜっ(もち、助手席でだぜっ)って結局打たなかったケドな。
パジェロミニに戻ると、なんかクルマの駐車してあった位置がずれている。「お巡りさんに『すぐ動かすよね』って言われて『はいー』と言って、ちょっとずらした」とのコトだった。うむ。あぶねって感じ?
そーいやこの日の昼食は、鶴屋町のカウンター式ステーキ屋だったな。L商会の並びにあるんだが、なんか吉野屋のステーキ版って感じ? 結構おトクって感じだったぞ。名前忘れたけど。あと関係無いけどL商会の向かいの望遠鏡屋はなんで休日に営業せんのだ?
・14日、月曜日。
青森へ出張。あんまし面白くない出張だ(面白い出張っつーのがあったら見てみたいもんだ。あ、奥さんを呼んだ沖縄は面白かったか)。
・17日、木曜日。
強引に仕事を終わりにする。しかも水曜の夜に。
従ってこの日は移動日だ。
会社へ提出してあるスケジュールは、この日に青森から仙台への移動である。しかし、出張の申請自体は青森を金曜日までの5日間で、のみである。実は、次の日の金曜日の仙台の出張は先週末に急遽決定したものなのであった。
朝、ホテルを出て、直接三沢空港へいっちまう。一応東京行き1便を押さえてはある。こりゃサクっと家へ帰って、ゆっくりするか。
三沢空港は一面の青空。チェックインを済ませ、100円払って屋上へ出る。
知っての通り、三沢空港は米空軍の管理であり、空自も使う軍港だ。しかし、南の一端には民間用としてJASの施設があり、東京とは4便が往復している。民間用の施設はホントに端にあり、民間機が出入りする時以外は、滑走路部との間にゲートが閉められるようになっているのだ。
屋上に出ると、まずそのゲートが開いているのに気が付いた。程なく、東京からやって来た600R(エアバスA300で名古屋に落ちたのと同型のヤツね)が右手の空に見えてきた。着陸後、ボーディングブリッジのところまで入ってくると、ゲートは閉じられた。直後、同じく右手からアプローチしてきた空自のイーグルが2機、並んで同時にタッチダウンしてきた。そばで見ていた5才くらいの男の子が「かっちょえー!!」と叫んでいた。うんうん、オジサンもそう思ったよ。
600Rからはカーゴが降ろされている。2コンテナ分降ろされ、すぐに建物の中へ運ばれていった。恐らく乗客の預け荷物であろう。そのあと、出るわ出るわ、たくさんのコンテナが吐き出されていた。うーむ、旅客機にもあれほどの貨物が積まれていたとは。国内流通激昂の一端を垣間見たな。
昼前にはビッグバードへ到着。京急バスで横浜へ着いた私は、またフラフラと徘徊を続ける。ヨドバシでHi8の120分テープが10本セットで3780円!! 奥さんの職場に電話を入れ、奥さんがテープを買っていないことを確認して即購入(ついでにDATのテープも箱で購入。但しこれは家計からは出ない。当然か)。
星川からアドレスで団地へ戻り、多少北海道の荷物をまとめ、仮眠をとる。明日は早いぞ。
奥さんが帰って来たら、2人で荷物の確認をし、パジェロミニに積み込む。明日の仙台の出張はクルマで行ってしまい(当然会社には新幹線で行くコトになってるし、後での清算もそーした)、奥さんを金曜日の夜に新幹線で仙台駅へ呼んでしまおうという算段だ。
・18日、金曜日。
3時半起床。くーねみー。あー、奥さんは寝てていーよー。
フラフラとパジェロミニへ。助手席に縮めた三脚にビデオをのっけてREC。8mmテープが回り始める。挨拶を終え、昨日の夜経路探索しておいたカーナビに従い、出発進行。この時4時過ぎ。
東泉寺経由で片倉町へ抜け、三ツ沢から首都高速に入る。パジェロミニはまだ走行が300kmちょいなので、一応4000rpmをメドに走る。平日の朝この時間では当然のコトながら渋滞なんか無い(湾岸側が開通してから横羽も楽になったな)。
大井の料金所を過ぎると、カーナビは分岐を新宿方面へ行けという。なるほど、箱崎まわりだな。しかし、湾岸経由に比べてこっちっかわは狭い上に曲がりくねっている。まあ、スピードがあまり出ないこの流れはどちらかというとありがたい。
パジェロミニのマニュアルシフト車は、5速4000rpmが80km/hというものすごくわかりやすいギア比になっている。60~80km/hくらいの時、左側にあるスピードメーターは私の視線からはちょうどハンドルに隠れるようになってしまう。私は、5速の時は、そんなワケでタコメーターをみているのであった。
出発後約1時間で東北自動車道のチケットを受け取る。川口から加須までは、昔古河のお客さんトコへ(会社に内緒で)クルマで通ってた時期があり、そーゆー意味では懐かしいところだ。120km/hで走っていてもカローラのおじさんにブチ抜かれるというアブナイところ。
ってなコトを思っとるうちに加須を過ぎ利根川を渡り那須高原のSAまで来てしまった。とりあえず給油でもしておこう。
途中宇都宮あたりで雨がパラパラと落ちてきてはいたものの、福島を通過する頃にはそれも止んでいた。ふとタコメーターに目を落とすと5500rpm‥‥おっとっといけねえいけねえ。結構な音量でDATを鳴らしているので、エンジン音もさほど気にはならないのだ。それにしても静かなクルマだなあ(ジムニーに比べると。比べるなって?)。
目指すお客さんは仙台の南に位置する亘理郡というところにある。よって、仙台よりはずいぶん手前の白石インターで4号へ降りる。少し北上したところで東へそれ、県道を伝って6号へ抜ける。それなりに道路行き先表示がされてはいるが、それが無くともカーナビの案内で迷う事なく走っていける。全く初めての地方道も、地図を見る事なく目的地近辺まで来てしまった。もちろん、完全無比ってわけでは無く、この段階でかなりの問題点も見えてきていた。川口では東北道を走っていたにもかかわらず、何故か併走する国道に自車位置が移ってしまったり(この現象は一般道の真上を走る首都高でも多発する)、一方通行や進入禁止等の通行制限情報が入っていなかったり(この後札幌では一通を逆走するルートに出くわした)、太い道路を優先して経路探索が進められ、結果的に大回りなルートが示されたり‥‥。まあ、そのあたりは使い方でカバーするよっかしょうがないんだけどね。実際、現在位置が地図上に出るってだけでも、かなり助かる(助かるっていうか、もーそれ以上の絶対的な安心感とミスの消去が出来てる)。経路なんかは、ある程度既存の地図で自分なりにルートを考え、経由地の設定等で検索を「いいように」促したりしちゃえばいいワケで。とにかく、亘理に辿り着いた時点で、「ああ、元は取ったかな」とまで思ったねわたしゃ。9時過ぎに、客先から100m程離れたところにある6号添いのセブンイレブンに到着。400km弱を5時間。まあまあですな。っていっても、後から考えると1時間しか余裕がなかったんだなあ(客先には10時でアポをとってある)。あぶね。9時55分まで、そこでパン食ったりしながらくつろいでいた。
パジェロミニを客先の駐車場に入れ、仕事開始。結構順調かと思われたが、終わってみれば18時半。まあ、この先1週間は仕事の事は忘れられるかな(と言いながらも月水金と会社に確認の電話は入れていたのであった)。
奥さんは、20時仙台着の新幹線に乗ってくる予定である。お客さんは親切に仙台駅周辺の駐車場を教えてくれ、私はその辺りにカーナビの目的地を設定して、レッツゴー。予想通り、1時間弱で仙台駅の前(といってもちと距離はあるが)の駐車場にパジェロミニを滑りこませた。新幹線の改札の前まで来たら、とりあえず家の留守電を聴いてみよう。っと、奥さんからの伝言が入っていた。「1本前のに乗ります」 ほーほー、すると‥‥。壁に貼ってある時刻表を見ると、2分後に到着ぢゃああーりませんか。ディバッグからビデオを取り出すヒマもなく、ぞろぞろと階段から人が降りてきた。奥さんはディバッグ1個しょった姿で登場。よーし、出発するべっか!
とはゆーものの、とりあえず腹が減っては戦はできん。メシだメシメシ。笹かまぼことか萩の月とかじゃ食事にならんので、「じゃ牛タンか?」とも思われたが、あまり出だしから贅沢する気にもなれず、仙台駅地下街でスパゲッティとかハンバーグとかを食した。食後も奥さんはドーナツ屋に興味がありありであったが、フェリーの時間がそろそろ気になり出した私は彼女の手を引きゴーインに駐車場へ戻る。
仙台のフェリー埠頭は多賀城のそばで、クルマだと30分といったトコロか。多賀城方面に花火の打ち上げが垣間みられた。途中我々はコンビニに立ち寄り、フェリーの中で迎える朝食を予め購入。フェリー乗り場が近づく頃、あたりの車両は少なくなってくるし、なんかあたりも暗ーい雰囲気。夜の埠頭近辺なんかこんなもんか。
仙台-苫小牧のフェリーは、太平洋フェリーが毎日、東日本フェリーが隔日に運航している。仙台発は両社とも夜になるが、東日本の方が時刻は遅く、22:30発だ。ちょうどこの日は東日本の運航のある日で、予め私は前の木曜に予約をしておいた。でその時予約番号をもらっていたのだが、カウンターに行くときそれをメモした手帳を携行するのを忘れ、「ああしまったああ」と思ったものの、特に問題なく乗船手続きが終了。どうやらかなり今日の便は空いているようだ。この時21時過ぎ。
パジェロミニを駐車場の端に寄せ、背広からTシャツとジーンズに着替える。辺りはシャシーのみ駐車されている車両がゴロゴロしている(シャシーとはトレーラーで「引かれる車両」の事っすよ、ってみんな知ってるか)。
21時半頃から、車両の乗船が始まる。長距離フェリーでは、同乗者は車両と一緒に乗船出来ず、タラップ(っつっても空港のボーディングブリッジみたいいなヤツだけど)から乗り込むことになる。同乗者の乗船は21時から開始されていたが、奥さんとは車両の乗船開始時刻をもって一旦別れた。問題なのは「何処で待ち合わせるか」であったが、「あの、明るいあたりの後ろの方」というかなりいい加減な取り決めをしたのであるが、大丈夫かなあ。
パジェロミニは右舷前方の乗り口から船に乗り込む。トレーラーを飲み込むだけあって、「わたし」の幅もすげい広い。中に入ると、そのまま後方に向かって車を誘導され、後ろ向きのまま車を詰められていった。おそらく苫小牧では後ろの口から出るのであろう。客室へあがるトコロが非常に分かりづらかったが、「ここですかねぇ」等と他のドライバーと言い合いながらも、なんとかエスカレーターに辿り着く。どうやらパジェロミニは2段ある車両用フロアの下の階に止められたようだ。エスカレーターを2段乗り継ぐと、上で奥さんが待っていた。
フェリーの2等船室というのがどういったものかは、みなさんご存知であろうが、船体が1万6千トン強というデカイものなので、2等和室はそれなりに広さがあるように感じられる。既に乗り込んでいる一般乗客の方々に、部屋の隅はとられていたが、シーズンもオフに入りつつあるのか、壁際みたいいなトコはまだ空いていた。いつ船が沈んでもいいように、救命道具入れの前に陣どる。結局、2等和室の乗船率は30%といったトコで、みんな寝るときは2人分の毛布を使っていたようだ。
定刻に船は出発。なんか疲れたって感じだし、特にする事も無いんですぐ寝てしまった。
・19日、土曜日。
ゴゴゴゴ、ゴゴゴゴ、ゴゴゴゴ。2等船室はあたかも真下にエンジンがあるかのような振動と騒音に囲まれている。なんとなく7時前には起き出す。隣の老女に「お若いのに早いわねえ」と言われる。確かに、夜活発に動き回っていた高校生だかの男女の団体はまだグッスリだ。
奥さんと船内でも探検しよう。1フロア上がると、デッキに出る扉があった。外に出、潮風を浴びる。空は晴れているわけでもなく、かといって「どんより」というような重さもない。海は波も高くなく、恐らく良好の部類に入るのであろう。寝てる時はもちろん、起きている時も揺れは感じなかった。デッキを伝い、船の後方に行く。朝が早いのか、人がいない。この「ばるな」という船は、煙突が左右に2本ある。フェリーのパンフをみても、このW煙突はこのばるな(と同型の船)だけのようだった。それなりに風もあるし、なんか髪がベトっとしそうな気がしてきた。早々に船内に戻る。フェリーにも風呂がある(しかも、2等室用、とか書いてある)。案内を見たところ朝は8時から使用できるようだ(昨日の夜見た時はもう閉まっていた)。8時を待って、風呂に入る。男子用は、蛇口が6つにステンレス浴槽が1つの構成だ。私の前には1人だけ入っていたが、出る頃には5人くらいに増えていた。
さっぱりしたのはいいが、コレといってする事が無い。もうちょっと豪華な客船ならそれなりに設備もあるのだろうが、多分そーゆーのに乗っても僕らは飽きてしまうだろう。苫小牧着は13時30分だが、まだ時間があるぅって感じ?
ぼーっとしたりしてなんとか暇をつぶし、やっと下船の案内が放送された。乗る時は別々だったドライバーと同乗者も、下船する時は一緒に車に乗って出る。パジェロミニに乗り込み、エンジンをかけて下船を待つ。既に苫小牧のラジオが入ってくる。TVもかろうじて移るが、鉄の塊の中にいるせいかそんなに写りは良くない。
13時半をやや過ぎ、着岸の衝撃からもうすこし時間がたった頃、やっと目の前のゲート(兼タラップ)が口を開けた。誘導に従って外へ出ると、日が差している。カーナビの画面は未だ仙台のままだ。GPS受信状態確認の画面を見ると、8つとも「受信できず」になっている。ほぼ全天が見渡せる駐車場にいるので、そりゃあねえだろう。もう一回地図画面に戻すと、やっと状況が飲み込めて来たのか、いきなり現在地が苫小牧になった。
まず初めに目指すのは夕張だ。「メロンメロンメロン!!」奥さんの張り切りようといったらない。国道36号とJRを挟んで併走する真っ直ぐな道路を北東に向かう。沼の端から国道234号となり、そのまま岩見沢方面へクルマを走らせる。
途中、右側にコイン洗車場を発見。やや行きすぎたのをUターンして折り返し、とにかくパジェロミニを綺麗にしてあげよう、というコトになった。ワックスなんて持ってきてはいないワケだが、最近の洗車機からは洗剤だけでなくワックスも出てくんのな。普段ならフロントウィンドゥへワックスがかかったりするのはヤだからこーゆーのはつかわないんだが、異国の情緒が「何でもやってみよう」という気にさせる。それに、今回はRAIN-Xを塗るのでどっちにしろ関係ないのだ。どっちでもいいのなら、少しでもキレイな方がいいのは目にみえている。ま、この後またたく間に汚れていくのはこの時点で既にわかってたんだけどね。折しも天気も晴天と言えるほどに晴れ上がり、出だしは上々、パジェロミニも新車みたいだ(新車だって)。
三川の交差点を右折して274に抜ける道をカーナビは選択せず、栗山町で道道を東にそれた。
「あ、A-コープ発見!」奥さんは停車を希望。目を輝かせて店へ入っていった。数分で戻ってくる。手にはメロン。「キングメロン。5個3000円のところをバラで1個にしてもらい、更に100円まけてもらいました。1個500円です」早くも目的達成か?
A-コープの駐車場を出て、さらに夕張方面へ向けてフラフラっとクルマを走らせようとすると、「あー、また(そそるような)店があるぅ」との言葉。100mも進まないうちにカーナビの自車位置は再び停止する。「ちょっと待ってて」奥さんは個人商店っぽい店の中へ消えていった。すぐ出るつもりでエンジンをかけたままで待っていると、クルマへ戻ってきた奥さんが、「一緒に来て」という。エンジンを止めてついてった。この店には夕張メロンのいい在庫が無くなりかけていたのだが、たまたま冷蔵庫の中に冷やしたヤツがあって(自分で食うつもりだったのか?)、1個500円でいいからここで食ってけ、というのだ。ひょえーラッキー。店のおばさんは店の奥のテーブルに4分割された夕張メロンを用意してくれた。何を隠そう私はこれが夕張メロンを食する初体験だ。うわーオレンジ色だ。スプーンを入れる。ひえーやわらかい! スイカよりも手応えが無い。では、口の中へ。あああああ冷たくて甘くておいしい。「ちょっと熟れ過ぎていますけど」とおばさんはゆーとったが、いやー、ワタシャ満足っすよ。あっとゆうまに2人で1個分を平らげてしまった。
夕張市へ入っても、奥さんの目は輝いたまま左右に現れる店を凝視していく。ご存じの通り夕張市はメロンと石炭の町で、博物館や遊園地が一緒になった「石炭の歴史村」とかがあったりするのだが、我々は石炭にも「幸福の黄色いハンカチ」にも興味はなく、唯一寄った施設は「メロン城」であった。メロン城ではメロンワインの製造過程を見学できるようになっていたり、売店では各種のメロン副製品~ワイン、ジュース、ゼリー等の試食ができたりするのだ。入場料とかは必要なく、施設も新しくて綺麗であるのだが、面白いとかそーゆートコロではないかな。芝生の上にキタキツネが出てきたりすると、観光客が寄ってたかって写真を撮っていたが、キミ達そんなのドコでも見れるぞ。
夕張市を出る際にも、色々な店へ奥さんは寄ってみたが、栗山で見たような安くメロンを置いてある店はない。両実家へお土産として夕張のA-コープから安めのを見つけてそのまま配送手配をかけた。
なんだかんだいって陽も傾きかけてきた。夕張を後にした我々は新夕張を通り274号を通って、占冠で給油した後、北上して富良野へ向かう。
そもそもこの旅行では、1日目はココ!とかココで1泊!とか全然決めないで来たので(ココは行きたい!はあったけど)、その日の泊まる場所とかは完全にいきあたりばったりである(断っておくが、いきだおればったり、ではない)。北海道版昭文社ツーリングマップにはキャンプ場マークがついているので、名前とかで判断して夕方に適当に決める。この日は富良野にある鳥山キャンプ場だ。38号から富良野駅の手前で左にそれ、格子状に走る道路をカーナビに従って進む。富良野のスキー場とかはもう暗くなってて見えやしない。前を同じ方向に走るバイクは同じトコを目指しているのだろうか...。
バイクを抜き去りキャンプ場に着いた我々は、完全に暗くなる前にテントの準備をしちまうように動きだした。駐車場はバイクだらけ。テントを持ち場内へ入る。入り口の案内によると、このキャンプ場はどうやらタダのようだ。小さめのテントが無数に張ってある。比較的入り口近くがたまたま空いていたので、そこにドーム型テントを設営。このあいだ(っつっても結構前か)津久井湖のそばで使っていらいだなあ(我々が使うのは(注:友人らと共同購入物))。ガスボンベコンロで湯を沸かし、北海道初夜の夕食の支度をする。ごはんを食い終わるとそのまま寝てしまう我々だった。まだ9時前だ。
・20日、日曜日。
4時。起床。既に空が白みはじめている。とりあえず、メロン。メロンをパカっと半分に切り、二人で半分ずつ食べる。うーむうまい。いーのだろうかこんなことで。テントをたたみ、出発の準備をする。ふと、パジェロミニの後ろに停めてある(最初は捨ててあるのかと思ったが)軽トラックが目に留まる。フロントガラスに「笑った目」がペイントしてあり、荷台には祭りの飾りがしてある。どうやらイベント用のクルマのようだ。ナンバーを見たらこれがスゴイ。「北海道88へ・・・1」ときた。ご存知のように富良野は「北海道のヘソ」で売ってる町だ(この軽トラックにも「へそ祭り」と書いてある)。だからか「へ」っつーのは? それにしても「北海道」とは!
気の早いバイクは既に何台か出発していたが、どう見積もっても我々は「早い」部類のようだ。未だ無数のバイクが主人を待ったままだ。朝日が射し始めた頃、パジェロミニは国道を目指し元来た道を引き返していた。
今日の予定は美瑛と層雲峡だ。美瑛では、町内祭り、その名も「丘の町フェスティバル」が開催されるのだ。抽選に当たれば、グライダーにも乗れるのだ。キャッホーレッツゴー! とりあえず、そのグライダーが飛ぶトコロへ行ってみようということになった。あたりをつけて目的地をセットし自動探索させると、カーナビは日新ダムのそばを通り白金温泉の近くから回り込むルートを示した。確かに、美瑛の駅の方からだとかなり大回りになる。「それならついでに白金温泉に行ってみたい」という意見が出た。まだ8時前なので、それもよかろう。パジェロミニは途中の分岐を山側へそれた。空からは雨が落ちてきた。本降りとまではいかないが、うっとうしい1日になりそうだ。
白金温泉は、そこそこ宿泊施設が集まってはいるものの、「温泉街」と呼ぶほど栄えたところではなかった。ある宿舎の駐車場でUターンする時、「NEC陸上部合宿」とか書いてあった。なるほど、トレーニング姿の兄ちゃんがジョギングしとる。公営の温泉施設があるのだが、さすがにまだ早いのか、やってない。奥さんが訊いてきたところによると、9時から営業とのことだ。じゃあ、美瑛を見てからまた来よう、ということにした。
白金温泉を美瑛に向けて下る途中、右へ曲がると模範牧場がある。ちょっと牛を見たいという奥さんの希望通り、模範牧場へ向かう。おりしも、パジェロミニのオドメーターは1000kmを過ぎるところだ(これでもうブン回してもOKってコトだ(そうか?))。おお、牛だ。牛がいる。しかしこの後、何日にも渡ってどこでも牛を見ることになろうとは奥さんは思っていないようだ。
更に美瑛方面へ下っていくと、右手に滑空場の案内が見えた。恐らく、抽選で当たった人を乗せてくれるグライダーはここで飛ぶのであろう。まだ9時だし、ちょっくら見てみるか。案内に従ってパジェロミニを農道から更に横道へ入れるが、いっこうに「飛行場」らしき施設は見えない(私はこれまで「滑空場」というのを見たことが無い)。‥‥と、倉庫みたいな建物と、廃車になったような観光バス、それから乗用車が2台停まっているのが見えてきた。パジェロミニを並べて停め、外にでる。突然、「ブオーーン!」というロープの唸る音が聞こえてきて、倉庫の陰からグライダーが芝生の上を走り抜け、途中から40度くらいの角度で空へ舞い上がっていった。芝生の上をだぞ。いいんか? 見ると、横には着陸用らしき滑走路がある。グライダーは途中でロープを切り離すと、1000フィートもいかないくらいの感じから滑空に入った。観光バスはどうやら管制室と休息室に使用されているよで、ルーフには長い無線アンテナが立っている。中ではおばさんが無線でパイロットと話しているようだ。どうも場の雰囲気を察するところ、観光で来たらしき壮年の男女3人がフェスティバルの抽選とは無関係の別ルートでグライダーに乗せてもらっているようだ。グライダーは辺りを数分間旋回したのち、滑走路へ降りてきた。パイロット+ナビ(なのか?)の2人乗りの機体だ。翼幅は結構あるが、機重じたいは軽そうな感じだ(草の上で翼を持って方向を変えていた)。倉庫みたいな大きい建物の中には、もう1機のグライダーが停めてあった。
奥さんが訊いてみたところ、「フェスティバルで抽選に当たった人がバスで運ばれて来るから、順番に乗せてあげてくれ、と言われている」とのことだった。どうやらグライダーの人は町の人ではなく、今日頼まれてやっているっつー感じだった。「お金を払えば抽選に関係なく乗せてくれるんですか?」と訊いたが、「空いていれば、いいかな」との返事。「これからフェスティバルの人が来るから、その前にメシ食いたいんだ。町に出て、一応抽選に応募したら?」と言われた。先刻の壮年のグループもまだ乗りそうだったし、そうしてもいいかな。先程グライダーを引っ張ったロープは、自動車で発射位置まで引っ張りかえして来た。グライダーも、自動車で引っ張って、発射位置まで戻していた。まだ9時過ぎだ。フェスティバルは10時からの筈だがとりあえず町へ行ってみよう。
直線道路を美瑛の中心部へ向けて走っていく。実は、フェスティバルの会場が具体的に何処だかは知らない。さっきのグライダーの人も「んーよく知らない」って言ってた。市街地らしい町並みに入っていくと、アドバルーンが左手の方向に上がっているのが目についた。うーむ、きっとあそこでやっているに違いない。パジェロミニをグルリとまわして、アドバルーンめがけて走っていった。
会場は、陸上競技場みたいなところに開かれていた。回りの道路に沢山の車が路駐してあったが、どうやらこれらの車は地元の人達のもののようだ。まだ始まる前で、会場では準備にいそしむ人々の姿が見てとれた。路駐といっても、道路も広く、地元ぐるみでやってるワケだから、俺らが停めても捕まることはないだろう。たぶん。
観客席のスタンドの逆側にメインステージが造られており、あとはトラックを囲むようにテント(あの、よく運動会なんかで校長先生がいるところみたいなヤツ)が沢山張られている。うどんや蕎麦といった軽食を売るところ、現地の農作物を売るところ、等々、なかなか盛沢山である。
隣接している公園からの入り口のところがどうやら受け付けのようだ。A3くらいの紙に印刷された案内を貰う。例のグライダーとヘリコプターの抽選の案内が載っている。早速ふたり分申し込む。グライダーもヘリコプターも両方申し込む。グライダーは当たればタダで乗してくれるが、ヘリコプターだったら3000円払わなければならない(当たって初めて払う権利が生じるワケだが)。後で聞いた話だが、町で6000円分負担しているようだ(つまり航空会社へ払うホントの値段は一人9000円)。
さて、各テントをぶらぶらと見て廻る。奥さんはそりゃあもお興味しんしんで見ている。主に農作物に興味があるようだ。10時頃、PAより女性アナウンサーの声が響く。いよいよ開会のようだ。空に花火があがり、俄然華やいだ雰囲気になってきた。広場にもかなりの人々が集まってきた。やはり、地元の人が多いように見受けられる。広場の片隅で「ボン!!」という大きな音が響く。昔「ばくだん」と呼ばれていた米菓子を作っているのだ。奥さんは豆類をkg単位で購入。また、じゃがいもや、ゆであげてすぐに食べられるとうもろこし等を購入。このとうもろこし(変換すると「玉蜀黍」になったぞ)がもーメチャクチャうまい! 1つ1つの粒がはじけんばかりの豊かさで、味は甘く、まさに言うこと無し!って感じ。あと、現地産の食パン等を買ってみた。ばくだんは、この地方では「ドン」と呼んでいるようだが、それはタダで配っていたのでよろこんで貰った。雨のほうは、傘をささない程度に弱まっている。
そのうち、グライダーやヘリコプターの抽選結果が放送されだした。抽選結果は何回かに分けて発表されるようだ。グライダーの発表...うーむ、外れのようだ。番号を聞いていると「きゅうひゃく何番」とかいってたりして、こりゃあかなりの倍率だなあって感じだ。続いてヘリコプターの発表...これも外れ。しかしこうして聞いていると、意外に町外、あるいは道外からの来訪者が多い。発表の時は、「何々町の誰々さん」のようにアナウンスされるが、「横浜市からいらしてくれた、誰々さん」みたいなのもあって、やはりウチの奥さんのように情報に敏感な人達がいるのだなあ。そーいや、何回に分けて発表するのはいいが、もしかしたら時系列に分けて発表しているんかいな? そーすっと朝一で申し込んだ我々は既に外れたままなのか? それを尋ねに受付へいってみた。「ええ、そうですね、順番にまとめて抽選してますから、そういうことになりますね」との事。おお、こりゃ待ってても無駄だぞ。
ま、各テントも見るだけ見たし、あとちょっとブラっとしたら次の場所へ移動しようか、って事にした。なんか軽く食べたいって感じだったんで、私はうどん、奥さんはラーメンを屋台で(テントか)注文した。うどんをずるずる食ってると、次の抽選結果が発表されている。もうグライダーは3回目、ヘリコプターも2回目の発表だ。ヘリコプターも当たったら金出して乗ってもよかったんだけどなー。「‥‥横浜市からいらした上野竜也さん」 えっ!? 「同じく横浜市からいらした上野美和子さん」 えええっ!? 奥さんは聞こえてないらしい。「あた、あた、あたったみたいよ」「え? ヘリコプター? どっちが?」「両方!!」私は奥さんから財布をひったくると本部テントへ走った。おばさんとかおじいさんとか抽選に当たった人が集まっている。控えの抽選券と6000円を渡す。「あっちに赤いバスが止まってるから、それに乗ってヘリの場所に移動して下さい」 うわー。急がなきゃ。奥さんのところに戻ると、まだラーメンは3分の1が残っている。「バスに乗ってくれって」「えー、まだたべてるのにー、でももーいーやー、食べて」 私はラーメンをいっきに胃に流しこんだ。バスは大きい部類のマイクロバスって感じで、20人弱って感じの人たちが既に乗り込んでいた。我々はどうやら(今回送迎分の)最後の方らしい。バスに乗り込もうとしたところで、奥さんから緊急提案。「私たち、クルマでついてって終わったら直接出発しちゃった方がいいんじゃないの?」 うーむ、それもそうだ。バスの運転手さんに「僕たちついてっていいですか?」と訊くと、「いいよ」と言ってくれた。
ちょうどバスはパジェロミニの後ろの方に縦列駐車しており、バスをやり過ごしてその後ろにくっついていった。バスは白金方面へ走っていく。グライダーの滑空場への道のりの半分くらいの距離までくると、道路の右手の広場にバスが入っていった。後から聞いた事だが、ここは牛の選定会場に使う用地とのことで、しかし見た目は小学校のグランドみたいなトコロだ。パジェロミニをに端に停め、外へでる。と、おりしも上空からヘリコプターが降りてきた。ゆったりと着地をするその姿とは対照的に、ローターが巻き起こすすさまじい風が我々をふきすさぶ。ヘリコプターはよくTVとかの取材に使いそうな、前後2列シートの小ぶりなヤツだ。所属は北海道航空らしく、機体番号「JA9327」と共にペイントされている。ドアには大きく「遊覧」と書かれているので、こういう用途専用の機体なのであろう。整備のおじさんは「フランス製だよ」と言っていたが、おそらくユーロコプターなので国際協同といった方がいいのであろう(エアバスみたいなもんすかね)。
座席数は前2の後ろ4のところをフルに使っているようで、一度にパイロット以外の5席を乗客にあてているようだ。次の5人を積み込んだヘリは10分としないうちに帰ってきた。発着場となっているこのグランドには、北海道航空の人達の他に、受付をやっている(おそらくは美瑛の)人がいた。その人の指示に従って、乗客名簿に名前や住所を書き込む。約款らしきものが端に書いてあったような気がしたが、読んでる暇は無かった。僕達を先導してきたバスは、乗り終わった人たちを乗せて、会場の方へ帰っていった。
そうこうしているうちに、残るは我々2人だけになった。「お、こりゃ夫婦で貸し切りか?」とも思ったが、受付のおじさんが本部と無線で連絡をとっているところを横から傍受していると、どうやら次のバスを待つようだ。チェッ。整備のおじさん達は、この時間を利用して給油を始めた。グランドの反対側に停めてあった軽トラックをエンジンを停止したヘリに横付けする。荷台にはドラム缶が乗っており、どうやらこいつからポンプで給油するようだ。給油ホースを機体の給油口に付けるとともに、ドラム缶と機体の一部をワニ口クリップでアースした。ちゃんと機体側にはアースのマークが(あの回路図のグランドね)入ってる。「静電気による着火事故の防止なんだよ」との整備のおじさんの説明に奥さんも感心していた。しかしポンプが手動とは。このすきに記念写真とビデオを撮りまくった。
次のバスが到着し、いよいよ我々の乗り込む番だ。私はまっさきにナビ席に乗り込む。奥さんその他は後ろの席だ。パイロットのおじさんの手が様々な計器をチェックする。そして軽くブルっとヘリが震えると、エンジンが始動した。ローターが回り始め、機体の振動も大きくなってくる。おもむろにパイロットが左下のレバーに手をやると、文字通り「ふわっと」ヘリが浮き上がった。こ、この感覚は新鮮だ! 実は私も回転翼に乗るのは初めてだ。おのぼりさん気分でビデオも回しっぱなしだ。ヘリはランドマークタワーより高いくらいに上昇しながら、美瑛の中心部に向かっていった。美瑛の町は上空から見ると整然としていて非常に綺麗である。ただ、中心部以外のところは畑一面なので、そのアンマッチがまた妙である。美瑛駅のあたりでゆっくりヘリは反転し、パジェロミニの元へ帰っていった。そして、降機。記念にタオルを貰う。しかし、ヘリ面白し!
グライダーには乗り損ねたものの、非常に良い体験をした我々は、パジェロミニを再び白金温泉へ向けた。さきほどは営業前であった町営の温泉も、どうやらやっているようだ。しかし広い駐車場には我々の他に2台しかクルマが無い。シーズンオフで雨とはいえ、こりゃまた...。白金の温泉は「やせる」というのがウリなようで、奥さんも意気揚々だ。300円(一人当たり)を払い、中へ。「じゃ、適当に待ち合わせよう」と奥さんといいあい、男湯へ入る。さほど温泉に興味の無い私だが、ここはゆっくり身体を休めよう。と思いつつも、ちと熱い湯に身体を火照らせながらロビーに戻ると、やはり奥さんはまだいない。しかしそれほどのタイムラグ無く奥さんも戻ってきた。「痩せましたか?」「わかりません」
さて、美瑛へ戻る途中の道の双葉というあたりでカーナビを無視して左折した我々が向かうのは美馬牛だ。牧草の中をくねくね走ると、富良野線の踏切に出た。おりしも美瑛方面から客車がやってきた。1両編成だ。電車をやり過ごすと、回り込んで美馬牛の駅舎を目指す。うむ、こじんまりとしてなかなか良い駅だ。さっきの車両がちょうど駅を発車するところだった。駅前のAコープに奥さんがウィンドウショッピングにいき、今夜の夕飯にとサラダを買ってきた。
次に美瑛の駅舎を目指す。こちらは美馬牛の駅舎に比べると立派で、石造り調の壁とかがおしゃれである。いづれにしても、北海道の駅って内地のに比べると特徴がありますなぁ。
では、富良野地方を後にして、本日2番目のメインである層雲峡へ行こう。朝が早かったせいか、奥さんはナビ席でうとうとしている。かくゆー私も、ね、眠い。うーこりゃいかん。237号沿いのコンビニへパジェロミニを入れる。刺激を求めて店内へ。ペプシコーラと一緒に買ったのは、極辛ソーセージ。あと、顎を動かす為にせんべいを買う。ブシッとペプシを開け、また237号を北上する。そいでは、ソーセージをば。ぱく。ん? を? っひー!! 辛い!! 雰囲気を察して奥さんも目覚める。「あ、ちょうだい」 ほいほい。...どーだ? 「うわっ、かっらーい!」普段炭酸を飲まない夫婦はこの時だけはペプシを愛おしく思ったのであった。しかし、こりゃあ使えるぜ。
せんべいをばりばり食いながら、旭川市内に入る。北海道第2の町は流石に都会に見える。国道表示は39となり、石狩川沿いに東へ向かう。愛別あたりでやはり眠さも限界に達し、ドライバー交代。奥さんもせんべいをかじりながらハンドルを握る。
ふと目覚めると、おりしもあたりは層雲峡。しかし、雨。奥さんは車内から渓谷を眺めるだけにとどめ、そのまま層雲峡を通過していった。
そろそろ今夜の宿の心配をしなければならない。地図やガイドブックには、近くにキャンプ場などなさそうである。西の方へ地図を拡げると、サロマ湖畔にいくつかサイトがありそうだ。キムネアップ岬キャンプ場、これに決めたっと。大雪湖から石北峠を通り、北見へ向かっているまっすぐな道路を降りていく。留辺蘂(おおっ、こんな字も変換されるぞATOK9)で道道904号向かって左折する。途中、道道をそれそうになったが、カーナビのおけげで10mで気づき、すぐに復旧。途中国道333号を少しだけ経由し、佐呂間町の中心部へ入る。ここで北海道2回目の給油。国道238号に突き当たったところは、ピラオロ台のそばであった。湖畔沿いに国道を東へ走ると、キムネアップの入り口の表示があり、カーナビもそこを左折するよう示している。ここはサロマ湖の東端に近いところであるが、陸側の岸からちょっとした岬になっており、そこにキャンプ場が作られているのだ。キャンプ場はまさに湖畔にあるって感じの細長いもので、入り口近くにトイレ、やや奥に炊事場があった。トイレの近くには立派な犬が3匹座っている(ぬしか?)。やはりバイクの人が多いが、多いといっても全部で10張あったかなぁ?という寂しさだ。
6時を過ぎ当然陽も落ち(といっても曇ってて見えやしないが)、辺りも相当暗くなってきた。我々も、早々にテントを張り、夕飯の準備を始める。といっても、外はパラパラとはいえ雨が降っており、あんまし外にいたくない。ガスコンロをテントの中に持ち込み、換気をしながら火を着けた。美瑛で買ったとうもろこしを湯に入れる。さらに、これまた美瑛で買った食パンと美馬牛で買ったサラダ等を用い、サンドイッチを作る。食パンはきめが細かくなかなか美味しい。そしてとうもろこし! うーんプチプチ。言うこと無し。
今日の奥さんのドライブは彼女の史上最長距離なのではないだろうか。
・21日、月曜日。
5時起床。ううう、ちと寒い。雨は上がっているようだ。
朝食も美瑛産だ。じゃがいもを茹でる。ああああうまい。
キムネアップを出発した我々は、サロマ湖沿いに浜佐呂間へ出、そこから238号を東に能取岬を目指した。能取湖の南端辺りで左へそれ、美岬ラインというのを走る。ところがこいつがところどころ工事中で、かつもともとの未舗装路部分もあり、とにかくダートが楽しめる(?)ところなのだ。それもフラットダートのみではなく、工事中の部分は凹凸を楽しまなければならない。OKOK。スカイラインよりは車高が高いから大丈夫だろう(って根拠ないぞ)。舗装路から未舗装路に入るとそのまま走行中に4WDに切り替える(わははは、真似できねーだろー(昔の)クロカン4駆!ってなもんか)。この、いちいち車を止めて車外に出る必要がないっていうのは、こういった急に舗装が切れるようなシチュエーションではものすごく便利だと思う(クロカンの人に言わせると、「それは儀式だからいいのだ」って事だが)。パジェロミニの場合、4駆にもハイモードとローモードがあり、ハイからロー(あるいはその逆)の場合は静止してから切り替える必要があるが、この場合ももちろん車内での操作になる。ま、そんなわけで完全無欠に4輪が同速度で駆動する物体を左へ右へふりまわして進んでいった。直結4駆って、なんか無理くり進むって感じでいいね。「俺ぁこっちに行くったら行くんだあっ!」って雰囲気が、またこの車体サイズと妙にマッチしてるよね。んー、カワイイカワイイ。って事を思ってたら、1ヶ所難所があった。工事中でジャリを積み上げているところが、道路を3メートルくらいの長さで塞いでいる。おおお、ここを通れって? まあ、積み上げてるとはいっても50cmくらいの高さだが...。意を決して手前から勢いを付けて突っ込む。おお、進む進む。無事通り抜けた。しかしありゃあ、普通のクルマは絶対スタックするぞ。
能取岬の駐車場に着いた時、パジェロミニはなかなかクロカンっぽい汚れかたになっていた。シクシク。でもこんなことでくじけていては北海道の道は走れない。
能取湖もサロマ湖と同様、ほんの一部でオホーツク海とつながっている湖だ。その能取湖の北東に突き出た岬が能取岬で、もう少し前の時期であったらここもエゾキスゲやエゾスカシユリなどの花が咲き乱れている筈である。しかし今日は、今にも雨が落ちてきそうな、肌寒い日である。岬のそばにはアザラシの群生地があるのだが、どんなに目をこらしてもアザラシの姿はなかった。万座で見た透けるような海ではなく、青白く魚のウマそうな海だ。馬が牧草を食べている。
網走刑務所とかには全然興味がないので、網走をそのまま突っ切る。
小清水で原生花園を見る。駐車場の入り口がよくわからず、売店の横の「歩道」を走り駐車場へ入る(うーん軽でよかった。ってヲイヲイ)。ここも、季節が季節なら花ばっか、ってトコなのだろうが、今はただ草ぼーぼーって感じ。馬はでかかった。駅舎は観光客相手の売店と化しており、あの飾っていた制服も売り物なのだろうか。それにしてもオホークツ沿いは原生花園だらけだ。
斜里を通り抜け、知床へ入る。右手は常に緑の山だ。かなり淡々とした道を走ると、右側の駐車場に車がいっぱい入っている。オシンコシンの滝だ。幅のある斜面から水が流れ落ちてくる。階段を上り滝の正面へ向かうと、視野のほとんどが滝となる。しかしこのようなシチュエーションでも、ワイドコンバーターを装着したビデオカメラは滝全体をCCDに収めてくれる。んもー便利なんだかだー。
さて、そろそろ昼だ。ウトロでイクラ丼でも食うか。ってなわけで、とりあえずガイドブックを便りに「熊の家」というトコロに入る。ちょうど昼どきだったが、相席で着席。狭い店内はそれなりに混んでいるようだ。二人でイクラ丼を1つずつ、ついでに海鮮の焼き物を頼む。で...。結論を書こう。うまくない。ガイドブックに書き込もうと思ったが、図書館からの借り物なので思いとどまる。まずい、ってコトもないんだけど、値段につりあわんなぁ。だまされるな観光客、努力せいや店!
気を取り直し、更に北へ向かう。本日のメインエベント、カムイワッカの滝だ。こないだNHKの「おはよう日本」でも紹介していたが(おいおいコレ書いてる時期がえらい遅いのがバレてまうど)、ここは滝になって流れているのが温泉の湯というめずらしいトコロなのだ。滝壷が温泉なのだ。ガイドブックのりのりなのだ。と、こ、ろ、が。ここに行くまでが大変なのだ。まず、国道からそれてしばらくすると、ダートになる。気ままに遊べるようなダートではない。まず交通量が多い。知床といえば最後の秘境といわれるほど自然が豊かなところで見所も多く、観光客がひっきりなしだ。それも、車だけでなく、バイクはおろか自転車も多い(ホント、今回の北海道は自転車をよく見たなぁ)。んで、自転車の後についたりバイクの後についたりゴトゴトダートをゆくと、「もーここから先へはクルマでは行けん」ってとこまでくる。そーすっと、観光バスがUターンする場所を除いてクルマがびしっと停まっているワケだ(いや、フルスケールの観光バスがあそこまで入ってくるとは思わんかったっすよ)。狭かった林道がちょっとだけ広いってトコよ。もーカムイワッカとかその先目当てのクルマがびっしりよ。ちょっとでかめの1BOXとかクロカンなんか「うー停めるトコないよー」ってジタバタしてるんすよ。で、俺らはちょっとした隙間を見つけてするっと入る(なはははは)。次ッ! 靴下を脱ぐ。靴ももちろん脱ぐ。で、ビーサンを履く。クルマを出る。おおっと、雨だ。そう、ウトロから標高が高くなるにつれ、フロントウィンドウに雨粒が当たるようになってきたのだ。しかし、意外と霧雨っぽくて傘が無くてもヘーキだぞ。2人でパーカー被って歩き始める。カムイワッカの滝にいくには、滝から流れ出る渓流を沢登りしなければならない。あれほど頑なに登山系を嫌がってた奥さんも、超具体的な目的があるとブーツで登りにくそうなバイクの兄ちゃんをズンズン追い越していく。流れに足をいれると、暖かい。この陽気のせいか、沢から湯気がたっている。水面下の岩は、コケなどが生えてはおらず、ビーサンでも滑ることなく非常に登りやすい。泉質の影響か、岩は青や緑のなんとも言えぬ彩りである。当然、魚などの生き物の姿は見られない。沢を登っていくにつれ、ほんの少しずつ足首にあたる「お湯」の温度が上がっていくのがわかる。しかし、目指す滝壷はなかなか先のようだ。下ってくる人達は、「まだまだだよ」と口をそろえて言う。沢は我々のような初心者がビーチサンダルで登れる程度のものではあるが、1、2ケ所、「どーやって登ろうかな」と考える程度の難所はあった。そのうちの1つで、登る人と下りる人で渋滞している場所があった。4mほどの高さの崖。上からおじさんが下りてくる。‥‥と、「がぽっ!!」と大きい音がした。おじさんが落ちたのだ。崖の中ほどで足を滑らし、腰から落ちたように見えたが、大丈夫なのだろうか。おじさんの連れらしき女性が「だいじょーぶー?」と訊くと、「ああ、だいじょぶ」と返事をしていたが、あれは痛いぞ、絶対。30分ほども経ったであろうか、我々の目の前には、滝壷に浸かる7人程度の人の姿があった。早速我々も、水着に着替える。相変わらずパラパラと小雨が降り、肌寒いと言える陽気だが、逆に滝壷に身体を入れるのも楽しみとなる。ちゃぽん。あ、あったかい。あー、いーなー。あー。あーーーー。あーー。浸かりながら冷静に考えると、そんなに熱い湯というワケではない。しかし、背後から流れ落ちてくる湯と、周囲の原生林というこのシチュエーションが、やはり、いい。
タオルで身体の湯を拭き取り、駐車場へ戻る。登ってくる人達ともよくすれ違い、観光のピークを過ぎたばずのこの時期でも人気をうかがうことが出きる。
さて、ダートを国道方面へ戻る。五色沼なども興味あったが、この天気ではあまり外を出歩く気にはならない。
334号線に出ると、そのまま峠へ登っていった。大学1年の時に友人と来た時は早朝の陽の光が非常に綺麗にあたりを照らしていた。しかし、この日は、霧雨。峠に登るにつれ、視界は悪くなる一方。なんとか峠に登りつめ、峠の駐車場に車を入れるも、とても外へ出ようとは思わない。
とぼとぼと、そのまま羅臼方面に下りていく。だんだんと、辺りは明るくなってきた。しかし、雨はパラパラと降り止まない。
さて、まだ3時過ぎではあるが、ここいらに今日の宿を決めよう。くねくねと羅臼に下りていく途中に、熊ノ湯温泉というのがある。ここは、タダで入れる温泉なのだが、強烈な熱さが地元以外の入泉者を拒んでいるようにも感じる所だ。その熊ノ湯温泉の駐車場(なのか?)のすぐ上に、国設キャンプ場がある。
とりあえず、国道沿いの熊ノ湯の駐車場にパジェロミニを停める。さきほどカムイワッカで湯に浸かったばっかりの奥さんであるが、早くも今日2回目の湯に浸かりにいった。
さて、今日の宿であるが、国設キャンプ場に泊まるのも一計ではあるが、少し趣向を変えてみよう。車中一泊。これだ。
まず、こないだ新横浜で買ったステンレス製物干し竿を2本共出す。それを、屋根の上のルーフレールにくくりつける。もーこれだけでサイコーにカッコイイ格好になる(なんだそりゃ)。次ッ。くくりつけた物干し竿を後方に向けて延ばす。ッフー!。そして、おもむろにグランドシートを出す。んで、そのグランドシートでパジェロミニの後ろ半分を包んでしまう。更にバックドアを開け、地面の上にクリアボックスを二つ重ねる。そしてフラットにした後部座席から外のクリアボックスにかけてシルバーマットを敷く。オッケー、これで即席テントの完成や。すさまG。
熊ノ湯からあがってきた奥さんと、早速クルマの中に横たわってみる。本来軽サイズのこのタイプのクルマでは不可能なコトだ。うむ、なかなかよい寝心地だ。
おりしも外は強い風。天気も回復に向かうのはまだ先のようだ。夕食も車の中で作ってしまおう。
そして満腹になった我々は暗くなる前に夢の中へ入っていった。
・22日、火曜日。
4時頃起床。さすがに朝がはやい。
奥さんは寝起きの熊ノ湯へれっつごー。私はパジェロミニ就寝仕様を走行仕様に戻す処理をおこなった。おお、空は晴れ上がっているではないか。
奥さんは温泉で友達を作ってきたようだ。根室から来たという彼女は、やはり夫婦で旅行しているらしい。夕方にここに着いた時、我々のクルマをチラっと見て、「早くから寝てるひとがいるねー」と思ったそうだ。ははは。
朝食を食べた後、元気に出発。朝のメロンは2回目だな。うまいぞメロン。
羅臼から国道は335号となり、南下する。標津川の手前で右折して244号に入り、直後左折して開陽台を目指す。中標津近辺の道路は似たような碁盤状の判別し難いものであるが、ここでもカーナビは余計な心配を排除してくれる。牧草の中を駆け抜けていくと、開陽台への入り口が見えた。
駐車場にはまだ車も少なく、さわやかな空がひっそりとした丘の上をひきたてている。鐘を鳴らすロープはからまっていて、やかましい音をたてられなくなっていた。展望台の向こうには、これから起床するライダーのテントがまだいくつか残っている。それにしても昔友人が火事を起こした木のテーブルはどこに? あとかたもなく消えているが?
展望台からは、まさに360度を見渡せる。地平線というのをこうも目にできるとは、北海道とは偉大だなあ。
駐車場に戻り、記念撮影を。このあたりから、奥さんは三脚へ興味を示し始める。足を伸ばし、ヘッドをクルクルと上げ、セルフタイマーをかける。
運転席に座り地図を広げていると、熊のようなおじさん(失礼)が「ドコ行きたいの?」と声をかけてきた。別に決まっているわけではないが、とりあえず「裏摩周」と返事をしてみる。「んー、それなら、(以下略)」と親切に教えてくれた。その上、「ここの道の途中に露天風呂があるから、行ってみるといういいよ」といううれしい紹介。更に、1BOXに乗り込んだこのおじさんは、パジェロミニを先導して走り出した。おおお、親切この上なし。
走り出す前にセットしたカーナビの道順をおじさんは知る由も無い筈であるが、きっちりカーナビの示すマイナーな道を勢い良く走っていく。養老牛温泉を通り過ぎるとダートになったが、デリカとパジェロミニの敵ではない。しばらく狭い道を進むと、デリカは川沿いの小屋のそばへ停止した。「ほら、そこの川の隣が温泉になってるんだよ。道から見えちゃうから、そこの小屋が脱衣場になってるから水着に着替えて入るといい。虻がうるさいから、気をつけなよ」との言葉を残し、デリカのおじさんは去っていった。
「からまつの湯」と木の看板に書かれたこの温泉は、まさに川に隣接しており、川向こうから引き込まれている湯が石を隔てて静んでいる。早速水着に着替えた我々は、タポンと足を湯に着けた。うう、あつい。あつうございます。なかなか全身を沈めようという気がおきないぞ。ふと、横を見ると、何やらコックのようなものが見える(断っておくが料理人じゃないぞ)。「熱いときはこのコックをひねってください。帰る時には必ず元に戻すこと」との注意書き。なるほど、これだ。くい、くい。しばらくすると、良い加減になってきた。ブン・ブン・ブンとアブが飛ぶのが確かにちと気になるが、ちょっとした秘湯気分がなかなかよろしゅうございました。
車の中に入り込んだアブをなんとか外に追いやりながら、我々はそこを後にする。ほんのちょっと北上すれば裏摩周に辿りつくのであるが、まずなにしろガソリンの残りがかなりヤバくなってきているのと、ここで摩周・屈斜路湖近辺に行ってしまうと見所が多くてその後のスケジュールが取りづらくなることもあり、とりあえず計根別方面へ戻った。ホクレンという農協系のスタンドで給油。この時まだ9時21分。
計根別の駅は、その大学1年の時に友人らの面子が集合した記念すべき場所であるのだが(バラバラに北海道に上陸し、1日だけ待ち合わせた)、標津線が廃線になって久しく、駅周辺だったと思われる場所をチラっと探して見たのではあるが、当時の面影はおろかどこが駅だったのかも判らなかった。
ま、道東を目指すことにしましょうか。道道31号から中標津経由で国道272号に合流し、東へ一路ハンドルを握る。オホーツク海にぶちあたったら右折し、ちょっとだけ244号を南に走ったら、すぐ左へそれ、野付半島へ入る。カマキリの手のようにオホーツクに突き出たこの半島は、トドマツの立ち枯れた「トドワラ」というのが売り(?)だそうだが、実は密かにまたアザラシを期待していた。しかし、車でいける先端の竜神崎というところへ行っても、そんなもんいやしねえ。いたのは双眼鏡を片手に計数機をカチカチさせていた兄ちゃんだけであった(あ、他にも人はいましたが)。
国道に復帰した我々は一気に南下し、厚床から44号に左折し根室に着いたのは早、昼前であった。根室と言えば、例の熊ノ湯の若夫婦が住んでいるところで、奥さんは抜かり無く「根室で美味しい場所」を聞き出していた。さっすが。
漁港と言えばやはり新鮮な魚、これだ。んで、素人考えでは、立派な寿司屋に入ればそりゃあもう気が狂うほどの旨い魚が食えるんだろうとか、思うでしょ。ところが、ですよ。彼女が言うに、色々行って一番美味しかったのは、地元の人に教えて貰った「回転寿司」だったのだそうだ。普段関東ではあまり口にしない秋刀魚の握りなんつーのが、脂がこってりのってて超おいCのだそうな。うっしゃあ、そいつを探そうぜ。なんでも線路のそばの、電気屋の隣だということだ。カーナビであたりをつけて、国道からそれる(もっとも、既にここから先には国道は無いが)。根室の駅へ一旦出て、それから線路沿いに路地を抜ける。くねくね。おっ、電気屋発見。あ、あった!! 「はなぐるま」という回転寿司が確かにそこにあった。んー、これこれ。電気屋と隣接しているので、目の前が大きい駐車場になっており、そこへ車を停める。二人で意気揚々と入り口へ。‥‥あれ?閉まってるぞ。看板の開店時間は11時からになってるから、どー考えてもやってる筈なんだけどなあ。も、もしや定休日なのでは?と不安を覚えた我々は夢遊病者のように隣の電気屋へ入っていった。奥さんが店員を捕まえて「隣の寿司屋はお休みですか?」と訊く。「そうですね」ぐわあああん。どうしたもんか。ここで食事が出来ないのはわかった。さんざん考えたあげく、パジェロミニが次に進んだのは地元のスーパーであった。とりあえずここで食料を買って、納沙布の近くでキャンプ場でも見つけて炊事場で調理をしよう。
ってなワケで店内をうろついてみる。スーパーといっても屋上に駐車場がある程度の大きさのところなので、なかなか食料品も種類がある。未練たらしくスシのコーナーに行ってみると、なかなか旨そうだ。しかしここで焦ってはいけない。一旦グルっと回ってみよう。あ、ホタテがパックに入って安い。どさ。ホタテを買ったからにゃバターも買うか。ぽん。白身の魚のフライが旨そうだ。ぽさ。ってな感じでどんどん買い物カゴは重くなっていく。ついでに軽食コーナーでソフトクリームを食べて既に奥さんはご満悦。
スーパーを出て納沙布に向けて走りだすと、ふいに奥さんが「‥‥あ、そこの通りに入ってちょ」と曰う。「安い魚屋も教えて貰ってたんだ。地元の人もみんな行くってよ」とのコト。なるほど、探し当てたその魚屋は入り口こそ小じんまりしているが、中々繁盛しているようだ。パジェロミニに残った私がピコピコとカーナビの設定をしていると、奥さんが大きいビニール袋を持って帰ってきた。「北海シマエビとカニ」おお、凄いぞ。
根室市から納沙布方面へ向かう途中に牧之内キャンプ場というのがある、というふうにツーリングマップに載っていた。ふむふむ、この辺りだな、と見当をつけて走ったのだが、どーにもこーにも見つからない。ぐるんぐるん回ったのだが、もう無くなってるのかも知んないし、しゃーないんでそのまま納沙布へ向かう。岬へ向かう道路はなんとなく三浦を彷彿させる景観であるが、牛がいるのでその違いはすぐ明白になってしまう。遠くに見える灯台は、走れど走れどなかなか近づいてこない。
岬にたどり着くと、シーズンも終わりかけているのかそれほどの混雑を感じない。が、なるたけ岬の近くで、かつ物を食い安いところを探すのも大変だ。と思ったが、それでもすんなりパジェロミニは売店裏の駐車場の隅に停められた。
バックドアを開け、クリアボックスから食器をとりだす。そして、さきほど購入したカニを解体しはじめた。要領のいい奥さんは、既に茹であげてあるカニを購入している。んではいただきましょう。パキ。ペキ。おお、足の中にも身がびっしりだ。はさみで(普通のヤツだけど....)ちょっきんして身をだす。ぱく。おお、うまいぞ。さきほどスーパーで買ったサバ寿司と一緒に、二人のおなかの中へカニ一杯は消えていった。しかし駐車場にグランドシート広げてピクニックしているのは俺らだけだなあ。思い出をありがとう花咲蟹。
せっかくだから岬をうろつこう。宗谷には行ったことのある奥さんも、道東は初めてなのだ。右翼の宣伝車もいない岬は、晴天の下で幾らかの観光客で賑わっている。ガイドさんに連れられた一行がいたので、こっそり後ろでガイドさんの説明を聞いた。あ、鐘がある。奥さんがロープを引っ張ると、ここでは「カン」と短く大きな音がした。「4島のかけはし」というモニュメントの前にいくと、三脚を立ててセルフタイマーを押しているおじさんがいた。シャッターを押し、勢い良く走りだしたおじさんだが、おいおい、一体どこまで行くつもりだ? 「カシャ」という音がした直後、おじさんは振り向いた。雰囲気を察したおじさんは、横にいた若いライダー2人組に、「間に合わなかったかな?」と照れながら訊いていた。ライダーも照れながら、「いや、大丈夫ですよ」と答えていたが、俺は全然大丈夫ではないと思うが。
カニの形を模したトイレや物産展示会館などを見学した我々は、しばしゆっくりした後、納沙布を後にした。
来た時とは反対の、根室半島の南側の道を西へ走る。根室からも44号へ入らずに、太平洋に面した道を選んだ。別当賀から初田牛は線路沿いを走るイメージだが、道の右側には全然鉄道の気配が無い。初田牛から太平洋に抜けると、道端に石を敷き詰めた畑のような場所をしばしば目にする。これはどうやら、昆布を干しているところのようだ。霧多布の手前には、ムツゴロウ、畑正憲の動物王国がある。しかし、王国に続く道の入り口には、「関係者以外入れません」との看板があった。奥さんがっくし。ツーリングマップにはこの辺りの道はオフロードたっぷりと書いてあったが、既に全面舗装済み。旦那さんがっくし。
霧多布大橋を渡り、岬のキャンプ場を目指す。ちょうど陽も傾きかけてきた。
キャンプ場の駐車場は比較的空いており、ほどなく我々は野営の準備を始める。サロマ湖で濡れてしまった栗テントも、夕日に当てて乾かそう。夕方の霧多布は、名の示すような霧などはみじんも出ていない。
さて、本日の夕食は豪勢にホタテのバター焼きといこう。根室のスーパーで臨時に買ったバターは小振りのパッケージの物を選んではいるが、それでもどう考えてもこの旅で使いきる事はない。ホタテも1パックどかんとあるが、北海道に来て気が大きくなっている我々はどかんと熱した鍋にホタテとバターを放り込んだ。じゅわあああ。うむ、よい香りがただよってくるY。頭上を飛ぶ海鳥がちと気になるが、ホタテのおいしさは満足するのに十分以上であった。食後にはコーヒーを作成。美瑛のフェスティバルで50円で買ったインスタントコーヒー(ビン1本でっせ)で、ペットボトルに1.5リットル一気に作った。コーヒーを手に持ち、美しい夕日を眺める。明日も晴れるであろうか。
・23日、水曜日。
4時起床。暗くなると寝ちゃうからなあ。友人のひとりが言ってた「波の音に目覚めてテントの外に顔を出すと、霧以外何も見えずに、よい雰囲気」ってゆーのは全然無く、今日も今日とて良い天気である。
4時半になると海岸からサイレンが鳴り響き、漁船が一斉に出撃してきた。どうやら、そういう取り決めらしい。
さて、朝食だ。朝はシマエビ。これも、花咲蟹と同様、魚屋で既に茹でてくれてある優れもんである。パックから出すと鍋いっぱい。味も程良くついており、そのまま追い炊き(?)した状態で非常に美味である。
テントを畳み、撤収に入る。駐車場を出たのが6時過ぎ。岬には目もくれず、目指すは島の西側だ。島の西には山田牧場というのがあり、ここで採れた新鮮な牛乳は地元の給食に出される。んで、朝早くこの牧場を訪れれば、その牛乳を分けてくれるというのだ。これは黙っていられない(電波少年か?)。牧場の入り口に車を着けると、奥さんはいそいそと奥の建物へ歩いていった。しばらく待っていると、白牛乳とコーヒー牛乳の2本のビンを持って帰ってきた。キーンと冷えた牛乳は、さほど濃くもなく非常に美味しい。朝からどんどん美味しい思いをして、ホント、前回来た時とエライ違うっす(前回は地元の美味しいものをトンと食べなかった)。そんなわけで牧場の犬にも別れを告げる。
霧多布湿原の中を抜け、茶内から44号に復帰する。ここから一路、釧路を目指す。通勤時間と重なっているのか、この道路はやたら同方向にいく車が多い。途中工事等があり、久しぶりに道路の上で停止する経験を味わった。
ところで、今日は水曜日だ。僕はそろそろウズウズしてきた。もうそろそろジャンプやスピリッツが発売になるのでは? と、気になると止まらない。朝もはよから、道路沿いのコンビニに入りまくる。ジャンプは比較的すぐに発見した。スラムダンクOK。しかし、スピリッツがいくら探しても、無い。そんなこんなで厚岸を通り過ぎ、ついに釧路市内に入ってしまった。
これからの目的は釧路湿原の観光である。目指すは細岡というところなのだが、どうせなら湿原を堪能したい。地図を見ると、釧路の中心部から新釧路川沿いに真っ直ぐ北上するコースがあるではないか。これやこれこれ。本来なら44号から391号に右折するところを、わざわざ左折、釧路市街に入る。ここまでくるとさすがに市街地で、高い建物が無く横に広い所以外は、北海道というのを比較的感じさせない。釧路駅の東から根室本線をまたぎ、新釧路川へ向かう。最詳細モードになったカーナビに便りながら細い道を抜け、川にぶちあたる。ここで右折、川沿いに北上する。‥‥と、なんと途中から通行止め。環境保全の為か、自家用車が愛国あたりから北へは入れないのだ。ガーン。しゃあない、引き返すか。旧釧路川を渡り、44号に復帰し、コンビニで何度目かの停止。ついでに会社へ電話を入れ、主任に状況を聞く(まだ8時過ぎなんだが)。うむ、とりあえず大きい問題はないようだ。
パジェロミニにメシを食わせ、391号を使って北上する。391号に入ったとたん、回りが緑になってしまった。カーナビのマップも縮尺が自動的に落ちる。
細岡駅への案内板で左折し、しばしパジェロミニは上を向く。もっとも、高度計のメモリが変わる程ではない。道が細くなってからしばらくすると、観光客の車が細い道の脇にびっしり停められているところに着く。この辺りが細岡のようだ。軽の特性を生かして狭いスペースに割り込む。
ここは湿原が見渡せるポイントであり、なるほど、展望台になっているところまで歩いてゆくと、眼下に水をたたえた緑色の平野が見えた。平野といってもまったいらではなく、川有り、草有り、木々有り、といったところだ。まったく、原生の姿を見るというのは、どこも自分の存在が逆に小さく感じる行為でもある。
ふと右手をみると、気球が浮いている。浮いているといっても、恐らく地面から10mも離れてはいまい。ロープもつながれたままのようだ。表面に「JR」の文字が見えるが、おそらくJR主催のイベントかなんかがあるのであろう。
しかし我々は、すぐに次のポイント目指して車を戻した。国道に戻る道すがら、大量の児童が連れだって細岡方面へ歩いているのとすれ違った。なんだなんだ、何で歩いてるんだ?という疑問は、列の最後尾からちょっと下まで行った時に氷解した。観光バスが、道が細すぎる為に途中から入ってこれないのだ。まあ、地図上は達古武沼よりも細岡寄りなんで、距離としては短いもんであろうが。達古武沼の横を通っていく時に、来る時には気づかなかったが、向こう岸にキャンプ場が見えた。いい場所に作るなあ。湖畔の(沼畔か?)のキャンプたあ気持ちええやろうなあ(サロマ湖ん時は天気が悪かったし。くすん)。
391号をもう少し北上し、塘路を過ぎたあたりで再び左へそれる。ここから別の展望台を目指すのだが、おおお、なんと気持ちのいいフラットダートなんだこりゃ。ついついアクセルを踏みそうになるのをこらえ、カーブもドリドリさせないよう心掛ける(新車だもんね)。しかし直線もたっぷりあり、80km/hくらいはすぐ出てしまう。
このあたりには3ケ所程展望所がある筈なのだが、気が付くと3番目の展望台入り口に着いていた。小さい建物を抜けると、ずどーんと木を埋め込んだタイプの階段がそびえている。ううむこりゃ登りがいがあるぞっと。頂上に登ると、周りの観光客の顔はみな上気している。ここからも、雄大な湿原の眺めを堪能できた。
シラルトロ湖の横を抜け、ずうっと北へ向かった我々は、標茶で道道31号へそれ、虹別方面へ向かう。目指すは摩周湖なのだが、弟子屈は避けて、標津側から裏摩周に入るのだ。カーナビに従い牧場の間を抜け、綺麗な舗装路を駆け上がると裏摩周に辿りつく。裏と名がつくこの場所も、なかなかの数の車が駐車場に入っている。霧の摩周湖は、表よりも裏の方が見える確率が高いのだ。
果たして、我々が展望台に歩いてゆくと、かすかな霧がかかっていたものの、その湖面ははっきりと見てとれた。もうこれで奥さんは嫁には行けない。
せっかくここまで来たのだから、屈斜路湖くらいは見ておきたい。表側に回り込まねば。道を北上すると、緑という駅のそばに391号へ抜けるショートカットが地図にある。ふっふっふ、これだ。カーナビには出ていないので、あたりをつけてえいやっと左折。おお、いきなり砂利ダートだ。ふっふっふ(何故笑う?)。ああっと、しかしまたしても通行止め。しくしく。しゃあないんで、道路に復帰後、もう少し北に行ったところで舗装路のショートカットを見つけ、391号に出る。
国道を南下すると、川湯温泉だ。ここで右にそれ、屈斜路湖畔沿いの道をゆっくり走る(なんでゆっくり走るかとゆーと、前に観光バスが走っているからだ)。思ったより湖面が視界に入らないまま、243号にぶちあたってしまった。
やはり屈斜路湖を見るなら、美幌峠であろう。しばらく道を登っていくと、笹が風に揺れる斜面を従えた、峠が近づいてきた。駐車場は満杯に近いのではないかと思われる程クルマが止まっている。おりしも天気が良く、眺めも良さそうだ。しかしなんか風が強いなあ。
一番高いトコへ向かって階段を登る。すると、眼下に屈斜路湖が蒼い湖面を見せていた。中島の緑がひきたっている。よしよし、早速記念写真だ。奥さんは三脚の足が縮まったままの状態で、ヘッドのギアをクルクルと上げた。雲台には既にカメラが付けっぱなしの状態である。そして、三脚は、地面に置かれた。「奥さん奥さん、そんな地面に近いトコじゃ、屈斜路湖が写りまへんがな。もっとこう、上の方に置かなきゃ」と私がいうと、奥さんはしぶしぶ岩の上に三脚を乗せた。「なんかここ、安定悪いよ」「へいきでんがな」そしてセルフタイマーをかけ、二人は屈斜路湖側の柵へ駆け寄り、仲良く寄り添った。そこへッ、おりしもの強風が。二人がポカンと口を開けて見ている前で、三脚がスローモーに傾いていった。がしゃん。(笑) このときのフィルムには、間抜けな顔をした二人が傾いて写っているのを期待していたのだが、コマには地面らしき黒いベタな模様が写っているだけであった。売店へ戻り、じゃがバターを食べる。うむうむ、美味なりー。
美幌峠から北上し、美幌町から240号にまわりこむ。津別では、本当は町営の温泉に入るつもりなのであったが、時間の都合でパス。津別を越えて少しいったところで、右折して道道273号へ入る。このあたりは北海道の原生林の中を淡々と走るといった感じで、前も後ろもクルマなんか見えやしない。陸別から242号に合流し、そのまま足寄方面へ。何故かこの道、観光バスが多い。国道とは言っても、片側1車線の細い道路で、かつ曲がりくねっているため、一旦バスの後ろにつくとなかなか抜けない。しかし、ここでもカーナビの使い道があり、この先少し行くと200mくらいの直線があるな、なんていうことが予知出来るのだ。これは意外にありがたい使い道であった。足寄で給油。今日2回目。
本別を抜けると、242号は池田町に辿り着く。今日の夕食はここでとることが希望なのだ。目的地はワイン城。この観光施設的な建築物には、町営のレストランが入っており、池田町の牛肉を始め、様々な豪華料理がリーズナブルな価格で提供されている、というのが売りになっている。そーれレッツゴー。
目当てのレストランは町の風景を見渡せる西側に面しており、眺めバツグンの中で食事ができる。案内された席はまさに窓側で、非常にグーであった。もっとも、このレストラン自体かなりの広さをとっており、オフシーズンの今となっては、入り口で待たされる事にはならないのであろう。着席し、メニューに目を通す。うーむどいつもこいつも旨そうだぞ。まあ、せっかくなんで、パーっといきましょうか。そんな二人の目に飛び込んできたのは、メニューの中の料理ではなく、テーブルに敷かれたペーパーであった。「牛1頭コース」おおお?なんじゃこりゃ?? 別のものを注文しかけていた我々は慌ててボーイさんを引き留め、「ここここれ何ですか? 2人くらい分なんですか?」と訊いてみた。すると、ちょうどわれわれのようなカップルが食するにはちょうどよいぐらいのものであるとのこと。うしっ、決定だ! 「すんません、じゃこっちに替えて下さい」と、期待に胸膨らませて変更の申し入れを行う。
なになに、タンにヒレにサーロインにテールシチュー、北海道じゃがとコーンにぎょうじゃにんにくまで入って、うーもー完璧やないですかっ。っと食い入るようにテーブルペーパーを見つめる私達ってばカワイイ。暮れかかる町の風景を眺めながら待っていると、それは、やってきた。どーん。でっかい鉄板に様々な肉が「これでもか!」と乗っかっている。うわー、こりゃすげい。ビデオビデオ。
「おいしーねー」「ねー」と川原泉のように言いあいながら食べ続ける我々の顔は始終ニコニコであった。あああ、満腹だぜい。
そしてなんと、このコースを注文した人には、記念のテレホンカードをくれるのであった。しかも、そのテレホンカードには、連番が振ってあって、このコースを何番目に食べたかがわかるという。ちなみに我々は15116号であった。
レストランの出口近辺は、売店になっており、我々はぷらぷらと回ってみた。食事中にも飲んだ葡萄ジュースが小さいボトルで売っていたので、1本ゲット。それと、全国の池田町(大阪は池田市だが)の特産品をベースに作ったソーセージセットがあり、面白そうなのでゲット。その後、テラスに出て池田町の風景を眺めていた。
さて、次の目的地は帯広だ。池田町を出ると既に日が暮れてきたが、もう1ケ所寄るトコロがあるのだ。六花亭という洋菓子屋さんだ。NIFTYにも店を出している先進的で女子にも人気の本店がこの帯広にあるのだ。
帯広駅のそばまでは、比較的スムーズに来た。がしかーし、なかなか目当ての六花亭が見つからない。ぐるんぐるんと廻ってみたが、どーにもこーにもラチがあかないので、適当なトコロにクルマを停めて、奥さんが歩いて探しにいくことになった。なんか、繁華街の飲み屋が集まっていそうなところで比較的停めやすいところがあったので、パジェロミニを右に寄せる(一方通行なのだ)。奥さんは、いそいそと出ていった。わたしは一人、車の中で待つ。んーむ、ヒマだ。あ、そうだ、帰りのフェリーの予約をしてしまおう。なんか飲み屋がいっぱい入ってそうなビルの1Fに公衆電話が見えたので、テレホンカードと行きの時のフェリーの関係資料をひっつかんでクルマを出る。そして、仙台に電話あーんど予約。おっけー。
奥さんは、なかなか帰ってこない。飲み屋のねーちゃんみたいのがうろうろしてて怖い。TVを見て気を紛らわす。うううさみしい。あ、帰ってきた。手にケーキ箱。ずいぶん嬉しそうだぞ。やはりちょっとわかりにくいところにあったようで、人に訊いて探し当てたそうだ。時間も遅かったので、閉まっていたかとも思ったが、ラッキーであった。
よし、それでは今日の寝床を探そう(おいおい)。地図を見ると、帯広の南西方面に何カ所かキャンプ場がある。やや奥まったところに、伏見仙峡キャンプ場というのがあるので、とりあえずここを目指そう。236号を南に下り、20kmほど直進して右へ曲がる。一応カーナビ通りに進んでいるので不安は無いのだが、なんだこの周りの暗さは。すんげー暗いぞ。怖いったらありゃしない。ちょっとライトを消してみる。う、うわー。ホントにここ市内なのか?
芽室から10kmほど南に、新嵐山というリゾートエリアがある。ここにもキャンプ施設があるようだ。比較的容易にたどりつき、パジェロミニのライトがキャンプ場の案内板を照らし出した。「新嵐山荘フロントまで申請に来て下さい」の旨の表示発見。んーちと面倒だなー。やっぱ伏見仙峡っつートコに行ってみっか?
伏見というところから山間に入る。ううむますます怖い。さて、カーナビによるとこの辺にキャンプ場があるのだが? 無い。無いぞ。通り過ぎたようなのでリターン。やはり、無い。牧場らしき施設はあるのだが、キャンプ場の案内のようなものは目に入らない。まいったなー。怖いし、ちょっとここはやめますか。
芽室に向かって少し戻る。うし、新嵐山荘っつーとこに行ってみよう。ををを、なんか立派な建物だなあ。リゾートって感じ?
場違いな気もするが、てくてくと入っていく。フロントにて、キャンプ場を使いたい旨を告げる。用紙へ記入の上、プレート(これが直径30cmくらいある丸いプラスチックなのだ)を渡される。料金は、ロハ。無賃宿状態はまだ続く。
パジェロミニをキャンプ場の方に戻し、必要最小限の荷物を持って外へ出る。ここは、駐車場からキャンプサイトへは少しばかり歩かなくてはならないようだ。見取り図に従って奥へ進むと、小川のせせらぎが聞こえて来た。これが、先の伏美仙峡キャンプ場(のあるべきところ)あたりから流れてくる美生川だろう。
キャンプサイトには、やはりライダーやサイクリストの姿が見える。しかし、全体的にまばらであり、シーズンの衰えを感じる。適当に空いてるところに栗テントを張り、そのまま夢の中へ。
・24日、木曜日。
うーむ今日もいい朝だ。奥さんは小川のそばを散歩してきた。テントを畳んでパジェロミニのそばへ行き、朝食の準備。
朝食では、早速昨日買った全国池田町の名物をあしらったソーセージを炒める。なんかいろんな風味があって面白い。
今日はまず、亀の子温泉を目指す。然別湖のそば、かなり奥まったとこにある、アルカリが売りの秘湯だ。
芽室まで北上し、国道38号に左折する。‥‥と、コンビニ発見。早速イン。おーっ!スピリッツ発見! やっぱ今日発売であったか。ふっふっふ。思い残す事無し。
十勝清水のあたりで道道735号へ右にそれる。鹿追で道道726へ左折、北上。この辺りは横への広がりと山や並木の高さのバランスが非常によく保たれている景色が続く。白樺峠を掛け登り、然別湖へ到達。っと、奥さんが、「あー、然別湖まで来なくてよかったんだー」と曰う。なるほど、目指す亀の子温泉は上士幌側にあり、然別湖まで来たら行き過ぎだ。よしよし、ちと戻ろう。その前に、カーナビでちゃんと亀の子温泉のあたりに目的地をセットする。実は、私が「次の目的地は然別湖だ」と思いこんでそこに目的地がセットされていたのだった。カーナビは比較的小さい道を選び、最短に近い感じで亀の子温泉へ回り込む道を示した。上士幌の平野を抜け、国道273号に出る直前で北へそれる。お、亀の子温泉の行き先を示す看板を発見。それに従ってパジェロミニを脇道へ入れていくと、とたんに道はダートになった。
亀の子温泉に到着すると、そこはなかなか立派な温泉宿といった風情の建物であった。駐車場にも、客のものらしき自家用車が何台か停まっている。朝の9時ということで、出発していく車もあった。
奥さんが中へ入り、外湯の使用について尋ねてくる。一人350円でOKだそうだ。早速クルマから道具を取り出し、なかへ。ふむ、少なくとも男湯の方は誰もいないようだ。裸になって入り口に入っていくと、大きな石の壁を模したついたての向こうにまさに私と同時に入る奥さんが見えた。向こうもこちらにきづく。おおっと!!見ようと思えばお互いに見えてしまうじゃああーりませんか。石を登れば湯に浸かっているところとかも見れそうだぞこりゃ。
とまあ、そんなことを思いながら身体を洗い流し、湯に浸かる。ううむ、なんかピリっとくるなあ、ここは。あんまし浸かってると溶けちゃうとかあんのかなあ?
元来カラスの行水である私は、ここでもロビーでぼーっとしながら奥さんが出てくるのを待つ。何人か女湯に入っていったのと入れ替わりに、奥さんが頬を染めて出てきた。
パジェロミニの待つ駐車場へ戻り、そのままクルマの中で昨日奥さんが帯広で買った六花亭のケーキを食べる。うまいうまい。
さて、上士幌から国道273に乗り、北上して次の目的地層雲峡を目指す。2日目に通り過ぎただけとなってしまったこの地に、再度チャレンジしてみようというワケだ。糠平湖の横を通り過ぎ、更にパジェロミニはどんどん標高を上げていく。周りは、山、山となってきた。三国峠を越え、大雪湖のほとりを通り抜け、国道39号へ合流。このまま東へハンドルを向けると、すぐに渓谷な景色になり、左手には流星の滝が見えてきた。
一応目的はロープウェイに乗ることなので、国道沿いの駐車場にパジェロミニを入れる。うわー、フロントグリルの周りは虫だらけだ。血とかもほとばしっていて、こりゃあ見るに耐えん。といっても、今は大きめの死骸を取り除くくらいしか出来ないのであった。
みやげ物屋の並ぶ通りをテクテクと歩き、ロープウェイ乗り場へ。ここから黒岳へ向けてロープウェイが登っていくのだ。反対側には旭岳のロープウェイがあるはずだ。チケットを買ったが、ちと時間があるので売店でふらふらとする。シマリスの写真集とかがあったりして、「ああ、こんなのもいるんだねえ」と思う。この時は、まさか目にすることは無いだろう、なんて思っていた。
ロープウェイが降りてきて、客が乗り場に並びだした。それほどの混雑には見えないが、ロープウェイに入ってみると、満員寸前といった人数で、人気の高さを思い知る。ブザーの後、お約束のBGM付案内テープと共に、ロープウェイは動き出した。
ロープウェイを降りるとまさにそこは「高山」って感じの風景で、しかしまだ緑豊かな趣がある。歩道をあるいていくと、こんどはリフト乗り場があった。高速ペア型の、ほんとに良くスキー場で見るヤツだ。そりゃそうだ、ここも黒岳という立派なゲレンドとなるのだ。しかしこうして板を履かずにリフトに乗るのは2回目だなあ(奥只見丸山で下のゲレンデに雪がなかった時が1回目。奥さんはその前に上越国際でも(荷物を持って)経験済みの筈)。お花畑の上をリフトで上がっていくのもヘンな感じだ。
終点に着くと、周りには白いモヤがうっすらと立ちこめていた。が、ときおりそれは流れて、眼下に山間を見せてくれる。
ここから上へ登っていくなら、登山カードに届けを出さなければならない。何泊かする人達もいるようだ。もちろん、僕らはあたりを散策するだけである。
ふと林の入り口を見ると、何か小さいものが動いている。‥‥シマリスだ! そばで気づいた人達も、こっそり近寄って写真を撮る。既にセミプロと化したウチの奥さんもじわりじわりとシャッターに手をかけて近づいていく。そこは、階段になっているところの上なのだが、どっかのガキ、失礼、お子さまなどは、階段を少し登っていく厚かましさである。っと、奥さんも負けてないぞ。足を開いてあられもない姿になってはいるが、しっかりファインダーを覗いたままだ。しかし、早回ししているようなシマリスの動きは本当に愛らしい。
記念撮影などを済ませ、下りのリフトに乗る。あ、おじさんが花壇の手入れをしている。リフトを降り、ロープウェイ乗り場へ行く途中、森からキタキツネの子どもが出てきた。なんかずいぶん丸っこいなあ。奥さんはまたもシャッターチャンスを伺う。ロープウェイ乗り場のところへ着くと、売店のおねーさんが店を出て、外のベンチのそばで「何か」にエサをやってる。ま、まさか‥‥。そのまさかであった。シマリスに餌付けしていたのだ。何匹か姿が見えるが、エサを貰うほど慣れているのはそのなかの1匹だけなようだ。そばで羨ましそうに見ていたウチの奥さんは、端から見てもウズウズしているのがわかる。しばらく店を放ったらかしてそんなことをしていたおねーさんは、ふいに店へ戻っていった。おそらく、もうすぐロープウェイが到着するのであろう。シマリスはまだ柵の上にとどまり、エサが少し盛られたままだ。奥さんは、そうっと近づき、エサを手にとる。そして、シマリスの口元へ‥‥。しばらく躊躇していたシマリスは、パッと1粒エサを口にした。奥さんの表情がぱあっと明るくなる。シマリスは危害が無いのを察すると、さらに奥さんの手に自分の手をかけ、エサを口に頬張った。すでにパンパンなのに‥‥。この時の奥さんの表情は、まさに、至福のひととき。ふいにロープウェイの発車のブザーが鳴り、シマリスは茂みの中に消えていった。
ロープウェイ乗り場の屋上は、展望台になっている。そこからは、層雲峡が眼下に広がっているはずなのだ、が、今日はいまいちモヤった感じで、見えたり見えなかったり。でも、奥さんにとってはこの北海道で1、2を争う思い出の地となったことであろう。
ロープウェイを降り、てくてくとパジェロミニに戻る。乗り込む前に、また記念撮影。どうも奥さん、壊滅的に三脚が気に入ったみたいである。ここではタテ位置に雲台を調整しての撮影となった。
さて、国道39号をひたすら東へつっぱしり、旭川へ入る。ここのホクレンで給油。この時既に3時半。昨日の足寄の給油からちょうど24時間だ。そのまま石狩川沿いに12号に抜け、神居古潭のあたりで左折。南下して芦別へ向かう。田舎びた風景を進むと、何回目か分からないけどまた国道38号だ。
スーパーがあったので、食料を買い出しに奥さんが入っていく。うわっ、スイカを買って来た。
そして、すぐに右折して、道道907号‥‥あれ? カーナビの表示も道路標識も国道452号になってるぞ。続々と国道化されとるなー。
あ、雨が降ってきた。前を走る2台のオンロードバイク、どうも地元のバイクなようなんだが、半袖じゃ寒いんちゃうか? 手元のツーリングマップには「たっぷりとオフロードが楽しめる」と書いてあるんだが、なんかすっかりアスファルトが覆ってるし(泣)。バイクもどんどん見えなくなっちゃった。と思いきや、いきなりダート出現! おーし一発ぅ! どーりゃーーーー!追いついたー! しかしホントここ国道?って感じの狭い道なんでなかなか抜けない。って思っているうちにターマックに戻ってしまったい。っきしょうめ。しかし冷静に考えると12号を走り続けて三笠から抜けてきたほうが早かったような‥‥。
目指しているのは、桂沢湖。ここにも湖畔に国設のキャンプ場があるのだ。オンロードに戻るととたんに大人しくなるパジェロミニ。しかしあのバイクはどこに行くつもりだったんだ? 雨がしとしと落ちてくるなか、キャンプ場到着。ううむ今日も暗くなりかけているぞ。しかしここは活気のないトコだなー、ってそりゃ雨降ってんだからしょーがねーか。なんかキャンプ場の中心部をみんなが避けるようにして端っこに張り付いているぞ。まあ、これも中心部が水たまりだからしょーがねーか。
我々は、ちゃっかり炊事場のそばにクルマを止め、木の下にテントを張り、炊事道具を炊事場の屋根の下へ持っていった。んーしかし前に来てる人達はもー寝てんのかいな?
今夜はうどんだ。う、どーん(このギャグを分かってくれる人がはたしているのだろうか)。もー最後の晩なので鍋をフルに使ってうどんを茹でる。炊事場に電気を灯し、屋根の下で食するのは、なんか風情があってよいぞ。付け麺にして、いきなり鍋からすくって、いいっすねー。
そうこうしているうちに、ミニ(英国製の)に乗って、カップルがやってきた。う、わー、すげい荷物詰め込み状態。同じミニでも、積載量では勝ったな。
しかし、最後の夜が雨とは。しばし、パジェロミニの中でビデオ鑑賞。はっはっはっは。と笑った後は、浸水に気をつけながら、寝る。
・25日、金曜日。
おお、晴れとる。
朝は、スイカ(うーん)。1人、半分(うーん)。むしゃむしゃ、ペっ。むしゃ、ぺっ。ぺっ。げふっ。
1BOXワゴンで1ケ月かけて回っているという、初老の夫婦と知り合いになる。定年後の贅沢な旅行だそうな。毎年やってますって。いいなあ。
朝日の当たる中、シュウパロ湖へ下る。アスファルトとダートが交互に現れ、走りにくいったらありゃーしねー。
初日に来た道を戻るように、夕張から栗山に抜ける。234号を真っ直ぐ南下し、目指すは千歳、インディアン水車。おお?カーナビは三川のそばでミョーに脇道を走る道を示すぞ。面白いんでそのままそれに従う。
国道337号でくねくねと千歳に向かうと、インディアン水車が、ある。ここは、千歳川を登ってくる鮭を捕獲する装置があるのだ。が、今はまだその時では無く、売店で売ってる物産にも何か華がない。水車も、なんか準備中って感じだし、目に付くのはおびただしい数の修学旅行の女子高生と、空を舞うF15だった。
苫小牧は目と鼻の先なのであるが、フェリーなんて夕方までに行けばいいし、なんか暇っすね。暇つぶしに札幌にラーメンでも食いに行きますか。
んーなんか眠い。んなので、奥さんにハンドルを渡す。
知らないうちにパジェロミニは36号を北上。気が付くと、かなり札幌市内に入っていた。かなり入り組んでいる市内を、カーナビに従って走り抜ける。目的地には、あらかじめ駐車場マップであたりを付けておいた場所をインプット済み。おおっとしかし! ここでカーナビは一歩通行を逆走するような経路を示す。ううむ、やはりこーゆーコトもあるんだなあ。ま、そこはマニュアルで切り抜ける。
市内でも、タワー式の駐車場ではない、フラットなところが多いのはありがたい。我々があらかじめ「この辺かな」って思っていた駐車場もそんなところで、パジェロミニも問題なく入場できた。外へ出ると、心なしか雨がぱらついている。傘を差すほどではないが、一応1本持っていこう。
火の熊ラーメン。入る。これ見よがしに有名人のサインが壁に貼られている。食う。旨い。旨いけど、これなら反町の「たんたん」の方が‥‥。
前回札幌ではCDを買ったが、今回は本を購入。そして、食後のアイスをホブソンズで決める。
駐車場を値段が上がる寸前に出、来た道を引き返す。あああ、眠い。少し38号を南下したところで、ローソンに買い物に入ったついでに、またしても奥さんにバトンタッチ。zzzz....。
はッ。気が付くと、カーナビの表示が苫小牧だ。奥さん速い!ってオレがずっと寝てただけか。
フェリーターミナルの駐車場にパジェロミニを停め、ターミナルに手続きに行く。おお、ここはずいぶんキレイな建物だ。小さい博物館みたいのもあってぐー。
17時半頃に入船。奥さんは桟橋から、私はパジェロミニを転がして船の中へ。ちなみに乗船する船は行きの時と同じ船(同じ型の船、ではなくて、「同じ船」)。しかし、パジェロミニは今回は2層ある車両用フロアの上の方に誘導された(入り口は下の層になるのだが、船ん中で上へのぼるタラップがある)。乗船してクルマのドアをロックし、2等客室の端っこのいい場所をキープして、桟橋からの奥さんを入り口にて待ち構える。が、なかなかこない。おっかしーなー、と思っていると、手に様々な菓子類の入った袋を持ってやってきた。1つ1つが北海道地域限定発売のものだ。さすがツボを押さえてますな(私も「限定発売」という言葉に弱いです(奥さんの500倍くらい)。12インチシングルとか昔よく買ってたな)。
いい場所をキープするも何も、行きにもまして帰りは空いている。毛布を1人2枚以上使うのは当然といった感じ。出港後、早々にフロに入り、寝てしまった。
長くもあり短くもあった北海道旅行は、これでお終い。
・26日、土曜日。
朝が早い。が、早起きしても何にもすることが無い。
船は10時過ぎくらいに仙台に入港。埠頭から走りだすと、しばらく苫小牧の海の上でウロウロしていたカーナビも、ふいに正しい現在地にワープした。
国道45号を真っ直ぐ仙台中心部へ向かい、仙台駅の西口側でクネクネと曲がって愛子バイパスのトンネルへ入る。1つ目の長いトンネルを抜けるとそのまま東北道への入り口だ。ここまでの道のりで渋滞等良くも悪くも都会らしさを感じる。
菅生SA(PAなような気も)で早速給油。これから長丁場だ。時間はまだ11時前。
それから、延々走る。
あくまでこれは私の推測なのだが、パジェロミニはその140kmまであるスピードメーターを使いきるのが精いっぱいのようだ。4速でめいいっぱい引っ張って5速に突っ込めば、フラット路でもまあどうにか140kmに到達する、と思う。ちょっとでも登りになると、120kmキープもちょっとしんどいかな、っていう感じだ、と思う。なにしろ80kmを越えるあたりからエンジン音が唸る唸る、と思う。しかしそれは、昔の軽よりはずいぶんとマシになっている筈だ。しかし驚く、と思うのは、140kmキープで突っ走った場合の燃費の高さだ多分。
ウチらのパジェロミニは上河内SAで2回目の給油。1時間57分しかたってないが? えーと207.8kmを24.7lで‥‥8.4km/lか(あ、ここんところも想像です。変に具体的だけど)。そんなに悪くないのか? いや、悪いか。
一気に東北道を走り抜け、三郷を通り越す。小菅の先で向島側抜け、箱崎、江戸橋経由で環状内回りへ。さすがにこのあたりはノロノロ運転だ。3号へそれ、用賀を抜けてそのまま東名に乗る。実は、団地に帰る前に、大和に寄る用事があるのだ。横浜インターを出るまでもスムーズ。
大和と相模大塚の間くらいに、グリーンアップセンターという市の施設があり、奥さんはここでフラワーアレンジメントの講習を月1で受けているのだ。今回の北海道旅行で今月分を欠席してしまったわけだが、花だけはとっておいてくれたのだそうな。このあたりは勝手知ったるといった感じで、カーナビの指示を無視しまくりで駆け抜ける我ら。
そして、団地着は17時30分。ふう、面白い旅であった。
しかしまだかたずけが残っているが。